12月の第一週目の土曜日、カピちゃんをターミナル駅まで迎えにいった。
まずは泊まり用の大きなバッグをコインロッカーにつめて、
腕を組んでデパートに向かった。

「街中クリスマスだね~!」

ここ数年、クリスマスデートなんてなかったからな。

働く女同士、有名パティシエのケーキとシャンパンで乾杯したり、
元彼に「クリスマスプレゼントやったんだからヨリ戻そう」とか言われたり、
まだ付き合ってた頃は、せっかくオシャレしたのに
場外馬券場の前で一時間以上待たされて風邪引いたり・・・。

私、オトナになってからろくなクリスマス過ごしてないなガクリ

今年は、イケメン連れてのクリスマスデートだ!

「ジュエリーショップ、どこも大盛況だね。
 この次期なんて、きっとカップルで入店しちゃったら、
 カピちゃん買うまで出てこれないんじゃない?」

「そうだろうね~ニコ

「じゃあティファニーいこっか!
 シルバーはもういくつかあるから、
 プラチナとダイヤのリングが欲しいなぁラブ

カピちゃんをからかって遊びたくて、
にっこり笑って軽く腕を引っ張った。

「婚約指輪だったらいいよ~ニコWハート

「えーと・・・汗

間髪いれずに返されて、逆に私が反応に困ってしまった。
ぐぬぬ、カピちゃん、さりげに私より上手だな・・・ムムム

そして、まずは約束の携帯を買いに、家電屋に。
一通り、機種の値段を確かめて、
一番安い1円の機種にすることにした。

「好きな機種にしていいよ?」

「先週自分の携帯最新の買ったばっかりだし。
 これはカピちゃんとの通話専用だから、電話だけ出来れば充分だよ」

1円携帯を、自分の名義で契約してくれるカピちゃん。

「クレジット機能のiDはどうしますか?」
「ああ、つけてください」

店員さんに言われるままのカピちゃんに
思わず私が口を挟まずにはいられなくなる。

「ちょ!怖いし、クレジット機能とかつけなくていいよ」
「ん?トラ子のこと信じてるし。使うなら使ってもいいよニコ

他人名義の携帯を持つだけでも結構ドキドキものなのに、
挙句の果てにクレジット機能つきとか・・・汗

使うつもりはないけど、カピちゃん、大胆だなぁ泣


携帯の手続きの間、昼間から営業してるお気に入りのバーで
またお酒と食事を楽しんだ。


カピバラ男と肉食女が結婚するまで。


最近わかったのは、カピちゃんも食道楽だってこと。
祖父母の代から、食には異様なこだわりを見せる家で育ったので、
私も、食べ歩くのが隙だったし、食には少々うるさかった。

「美味しいもの食べるのが好きだけど、
 あんまりお店知らないんだよねニコ

そういうカピちゃんを、お気に入りのお店に連れていくのが
楽しくなり始めてた頃だった。


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画像は、2008年当時、カピちゃんとのデートで撮影したものです。
某SNSから引っ張ってきた(`・ω・´)

付き合い始めたのが10月の終わり。
あっという間に年末の足音が聞こえてくる。

毎年年末は遠方への出張が増え、
まともに定時に帰れなくなるのがデフォルトだったし、
彼は彼で、通常業務の他に、研究発表があるらしく、
資料作りに追われているようだった。

「・・・となると、一緒に過ごせるのは12月の一週目あたりになるかねー。
 前倒しクリスマスにしますかー」

携帯を肩と耳に挟みながら、カレンダーを指で追った。

「トラ子、クリスマスに何がほしい?ラブ

「んー、通話代が気になってきたから、
 無料通話出来るケータイが欲しいな」

彼名義でもう一台契約してもらえば、
家族間通話ということで、無料通話が適用されるということを
既に調べてあった。

「うん、それは考えてるけど、他になんか欲しいものないの?」

「んー・・・。じゃあ、レベッカが百貨店限定で出してる携帯ストラップ!」

「わかった!調べてみるね~ラブ

「カピちゃんは何か欲しいものないの?」

「んー、トラ子、昔香水のお仕事してることあったんだよね?
 僕、あんまり香水とかわかんないから、僕に似合う香水見つけて欲しいなぁ」

確かに、フレグランスマニアが高じて、
一時それを仕事にしてたこともあるけど・・・。

メンズフレグランスかガクリ
あんまり詳しくないんだよなぁ。

ベタといわれようとも、エゴイストプラチナムが好き過ぎて
他の香水にあんまり興味なかったんだけど・・・
カピちゃんにあの香水は、似合うわけないしなぁうう

「わかった、考えておくね」


電話を切って、即PCを立ち上げ、色々なメンズフレグランスを探した。
香水好きのプライドにかけて、ありきたりなものは贈りたくない。
必死に探しまくった上で決めたのは、
もうずいぶん前に国内販売が終了した、TIFFANY MEN。

これならレアで人と被ることもないし、
オシャレなカピちゃんにもぴったりでしょ!

香水っていう消耗品だけじゃ寂しくて、
仕事帰り、自分のお泊り用のバッグを
サマンサタバサで新調するついでに、
サマンサキングスで、
携帯ストラップとバッグチャームを購入した。

先週、彼がお泊り用に買ったバッグを見たんだけど、
ポーターのシンプルなデザインのものだったから、
それにチャームをつけたら似合う気がしたんだ。

未だに、デパートのメンズフロアをうろうろしてると、
妙に気恥ずかしいような、緊張するような、妙な気分になる。

私の好きなブランドのメンズラインってことで選んだけど、
カピちゃんは気に入ってくれるかな・・・。

”僕が全部受け止めるから。守るから”

そんな台詞を言われて、
舞い上がっちゃうほど若くはない。

その場では嬉しくて涙も出たが、
一晩あければ、半分忘れる程度の出来事だ。


”お前を、世界で一番幸せな女にしてやる”

その言葉を信じてしまったから、
こうして、ひきこもりニートを追い出せずに苦労する今の日々があるわけで・・・。

口だけなら、誰でもなんとでも言えちゃうよね。
大事なのは行動が伴うかどうかなんだから・・・。


そんなことを思いながら、お昼休みをぼーっと過ごしてると、
携帯にメールが届く。

カピちゃんかな?と思ったら、
実家のママからだった。

『どうなの?最近は元気にしてるの?
 なんか変なことに巻き込まれたりしてないでしょうね?』

そのメールを見て、すっと血の気が引いた。
ママは、理由なく、こういうメールを送ってくるタイプではない。

思い浮かぶのは、数日前のニートの話。

「こないだ、お前の実家遊びにいってきたぜ!」

もうお前とは別れてるんだから、
私の実家に関わるな!と釘を刺したのだが、
お前の家族とは、お前を抜きに友人関係なんだだの
また屁理屈をこねたから、
話すのに嫌気がさして放置したのだけど・・・。

前にも、付き合うまでいかなかったけれど、
とある男性と仲良くなったときに、こんなことがあった。

あいつ、やりやがったな!?


仕事を終え、帰宅すると、
玄関には私のものではないピンヒールの靴があった。

残念ながらあいつが連れ込んだ女ではない。
近所に住んでる、腐れ縁の友人のものだろうな。


「おかえり~!」
「おう、おかえり!」

仲良く出迎えてくれる、友人とニート。

「遊びにきてたんだ」

「うん、今日は珍しく仕事がはやく終わったから。
 おみやげにデパ地下惣菜買ってきたから、一緒に食べようよ」

友人の横にいるニートを睨む。

趣味が似ていることから、
友人とニートはとても仲が良い。
私の元恋人だから、というよりも、
二人の間に既に友人関係が存在している。

このタイミングだもん、絶対何か吹き込んだに違いない。

気乗りはしないが、私も一緒にテーブルを囲み、
友人の差し入れであるデパ地下惣菜に手を出しつつ、
無難に世間話をはじめる。

「最近はどーよ?」

「私は相変わらず仕事漬けだよ。トラ子はどーなの?」

「平日働いて、週末適当に飲んで遊んで、その繰り返しだねー」

カピちゃんのことは、まだ話す気にならなかった。

それはニートがそばで聞いてることもあったし、
彼女のことを信用出来るかまだわからなかったし、
何より、まだカピちゃんと続く自信もなかったからだ。

「ほんとに?辛いの無理してない?隠してない?」

・・・やっぱり。
ママの昼間のメールと同じ反応だ。

「は?辛いって何のこと!?
 人がいない間に、またあいつは余計なこと言ったわけ!?」

「トラ子、友達が心配してくれてるんだぜ。その言い草はないだろう」

ニートが、したり顔で私に説教する。

「あんたが何か余計なこと言ったんでしょ!?」

「俺が何言ったっていうんだよ!!何もしてねぇよ!!!」

「トラ子、友達なんだからさ、本当にムリせず、辛かったら相談してね・・・」

お前以外にいないだろうが!!
殴りたい気持ちを、ぐっと堪えて、不機嫌なままその場をやり過ごした。


私が、カピちゃんと浮かれて過ごしてる間に、
暇と体力をもてあましたニートが、影で色々触れてまわってる・・・。

何を言われてるんだろう。
雰囲気から察するに、
カピちゃん、ひどいDV男にでも仕立てあげられてそうだな。

実家、学生時代からの友人には既に先回りされてるのか・・・。

どうしよう。
何か手を考えないと。

今後、本気で結婚を考えることになったときに、
家族や友人に紹介しようにも、
既にカピちゃんは最低男のレッテルを貼られてしまってるかもしれない。


絶対負けない。

あんな女の腐ったようなマネするニートなんかに、
邪魔されてたまるもんですか・・・!