大東京トイボックス 3 (3) (バーズコミックス)/うめ

大東京トイボックス(3)

おおきく振りかぶって(11)

僕の小規模な生活(2)


気に入ってる漫画3種の単行本が出たので、まとめて購入・読了。

大東京がみつからなくて通勤中に3軒ほど本屋をめぐる羽目に。

そもそもの入荷数が少ないのか……。

とほほ。みんな買ってくれ。




大東京トイボックスは、ゲームをネタにしたかなりリアル志向の開発のオハナシ。


今回も熱い話が続いているが、さて、この巻までくると、

この話に「熱」を感じられるのはどの層までか(笑)。

実際に開発にいる身としては、「うわっ」と思うような内容も多くて、

その中でのキャラの行動にリアリティやら共感やらを感じるものなんだけれども。


ゲーム業界とか、「実際の開発」とかに興味がある人はぜひ。


3巻では、開発上のいろいろなトラブルがスタジオG3に襲いかかる。



若手プログラマ・マサが、大手メーカーが供与しているゲームエンジンに

過度の期待をよせ、無断でそれを使用にふみきり、手痛い失敗を犯す。


「他社のゲームエンジンが、すげえモノにみえる」

これは、多くのプログラマがかかる病気だ。

すげえゲームが出て、「**エンジンを使ってる」とか聞くと、

それを使えば……なんて思いを抱く開発は、やっぱり多い。


もちろん、それらのエンジンは実際にすげーものなことが多いわけだけど、

それらは、決して夢のツールなんかじゃない。

現実の世界でも、ちょっと前に、物理エンジンで同じような話が出た。

このミドルウェアを使えば、簡単に、次世代表現ができるようになる……と。

そういうハナシに動かされ、うまくいかずに終わった作品が、どれだけあるか?

実際には、それらは、「ある目的」に特化されて作られていて、

それ以外の応用を利かせようとすると、とてつもない労力をもとめられたり、

非常に厄介な開発上の縛りがあったりする。


まあ、当たり前のハナシだよなあ。

それはつまり、基本を知らずに、応用問題を解こうとしているようなものなんだから。

せめて、基本問題の解き方を知っている人がそばにいて、

聞けば答えてくれる環境ならいい。

でも、それが他社で、問い合わせ体制が万全じゃなかったら、

もう、それで、大きなマイナス要素をかかえることになる。


ヨソで実績のあるゲームエンジンを流用できれば、開発がうまくいくのか?

そうそううまくいくわけがない。

そのツールを使いこなすだけの準備期間も求められる。

もちろん、そのツールを使い続けるなら、それはいずれ清算できる程度のコストになる。

だが、一本限りのソフトでそれをやるのは、あまりにリスクが高すぎる。


そういう意味で、作中での失敗は、あまりに「リアル」だ。


その様子を見に行ったモモの失敗も(人当たりのよさだけじゃコミュニケーションにゃならん)、

それを監督不足から見逃した太陽と依田の失態も、

相通じるエラーが、やはり身近にいくらでも転がっている。

開発上の「リアルな問題」を描きだした回が続く。


さて、太陽率いるスタジオG3の反撃はいつになるか。

開発に携わる身としては面白すぎる展開だが、

この面白さ、どこまで読者側に通じてるのかホントわからん(笑)

もうちょいスカっとする展開もいるんじゃないのか、って

門外漢ながら不安に思ってしまう雰囲気だが、はたして大丈夫なのか?





……ワタシ自身は、開発中に自分が死んだら、通夜に来てほしくはないなあ。

その時間、開発につぎ込んでほしい。お悔やみの言葉は、開発終わってからで十分だ。

たとえ自殺する羽目になっても、それは変わらないと思う。

ワタシの残したものを、せめてキッチリ完成させてほしい。