「リンクのボウガントレーニング」をほぼプレイ終了。

全面クリアしたわけではないけど、もういいかな、と。


ところで、このゲームには、ストーリーがない。

ゼルダの外伝的作品、ということで、何かあるのかな? と思ったけど、

まったく物語的なものはなかった。

まあ、任天堂のゲームとしては珍しいことではないんだけど、

過去に出た「ゼルダの伝説 4つの剣」についていたゲームには、

一応背景の設定みたいなハナシがあったので、

まったく完全になかったのは、ちょっと驚いた。


しかしまあ、WiiスポーツにはじめてのWii、

脳トレにWiiFit、ボウガントレーニングと、

とにかくトレーニング系のゲームには、ストーリーがないものが多い。

このへん、やっぱり理由があるんだろうねえ。

原作やストーリーつきの作品がないわけじゃないけど、

オリジナルのストーリーをもつトレーニングソフトは、やっぱり多くない。


と、いうわけで、

ゲームに「ストーリー」をいれるメリット/デメリットについて、

いくつか考えてみよう。


メリットは、一般的なRPGとそう変わらない。


● 物語があることで、ゲームに対する没入感があがる

● プレイヤーがストーリーに感情移入することで、ゲームを続ける推進力を増す


といったところだろう。

一方のデメリットは、こんなところだろうか。


● 物語が終わったところでゲームを「やめてしまう」傾向を強めてしまう

● 物語を忘れてしまったりすると、再開しづらい

● 物語の続きを気にするあまり、ゲームをやりすぎてしまい、問題になる

● コストの問題


こうやってあげてみると、ストーリーを入れることが、

「長いスパンで遊ばせるゲーム」にはかなり不向きであるといえると思う。


「ストーリーは全部みたから」とトレーニングをやめてしまうのは望ましくないし、

「もっと物語をみたいから」とガンガン先にすすめてしまっては、

飽きをはやめ、継続的なトレーニングを阻害する。

「ストーリーを配信しつづけ、継続的なトレーニングをうながす」ような仕組みもできなくはないが、

実際には膨大なコストがかかるため、継続的に使用料が入るようなシステムでなければ、

現実的はないだろう。


この辺、「オンラインゲームにストーリーがないものが多い」理由とも

一致するといえばするだろう。

FF11以外のMMOがあまりストーリーを熱心にいれないのも、

上記のようなデメリットが理由と考えて問題ないだろう。



トレーニングゲームの場合、

ユーザーは、もともと「その分野のトレーニング」に興味があって

ゲームを買っているわけだから、最初はプレイ意欲が大きいだろう。

そうすると、初期の段階において、プレイ意欲を増すような仕組みはメリットが小さく、

デメリットを避ける意味で、ストーリーをいれるのが適切ではない、ということになる。



興味深いのは、この当たりの事実から考えると、

「ストーリーを導入することが、むしろゲームに対する敷居をあげてしまっている」という事実だろう。

ゲームデザインの現場では、むしろ、

ゲーム世界にすんなりと入れるように物語を用意する例が多いように思うが、

実際には、「世界観を提示する」「物語を理解させる/説明する」という行為が、

敷居をあげてしまっているということになる。



そう考えて思い直してみると、歴代ハードでヒットした代表作品のジャンルは、

FC&SFC→PS&PS2→Wii&DSというそれぞれの時代において、

RPG→アクション→トレーニングと変遷している(*1)。

いわば、どんどんストーリーに依存しない方向に向かっている、ということになる。


一方で、この主要ゲームハードの変遷の歴史をひもとくと、

「ゲーム市場の拡大縮小」と「主要ゲームのストーリー性」は、

意外に密接に関係しているのではないか、と気づかされた。


FC→SFCでゲームのストーリーはぐっと深く書き込まれるようになったが、

ユーザー層のマニア化がすすむことになった。


そこで新規層の取り込みをねらったPSの初期タイトルは、

FFなどの大型タイトルを除けば、ストーリーの薄めのゲームが多かったように思う(*2)。


逆に、PS2になると、「映画とゲームの融合」などをキーワードに、

ストーリーをしっかり書き込むゲームがまた増えてくることになる。

結果としてPS2の代になると、マニア化がすすみ、ゲーム業界はユーザー数の減少に頭をかかえることになる。


DSやWiiは、物語性をさらに薄め、結果的に大きく市場を広めたことになる。



こういう見方をすると、


・ ストーリーを充実 → ユーザーのマニア化 → 市場の縮小

・ ストーリーを撤廃 → 新規ユーザーの獲得 → 市場拡大


という流れが、2度のゲーム業界の改変期におきていると

観察できるように思うのだ。 


いずれにしても、「ストーリーがゲームの敷居を高めてしまう」というのは、ある種の事実だと思う。

この辺、改めて認識しておく必要があるように思う。



(*1) PSでヒットしたRPGとかは、やっぱ続編臭が強い、という見方でひとつ……。


(*2) パラッパとかどこいつとか。ストーリーサイドがそれまでに比べると弱まったと思う……んだけど、

   実はボクはこの時代くわしくないので自信がない。うーむ。