ちょっと連載が長くなってしまっているので、
ここまでに決めたことを箇条書きでまとめていきましょう。
・ すれ違い、wi-fiでの対戦を中心としたゲームである
・ プレイヤーは、ロボットを改造・カスタマイズし、バトルさせる
・ すれ違い時(通信時)に、お互いのキャラデータを交換し、戦闘を行う
・ ロボットの行動は、事前に設定した行動指針に基づいたもの
・ 戦闘内容は、ランダム性のない、「同じ組み合わせなら同じ結果が一意に得られるもの」
さて、では、ゲームの設計をもう少し進めてみましょう。
すれちがい通信対戦を主軸としたとき、
もうひとつ問題になるのは、「再戦」という要素です。
要するに、負けてしまったあとの処理ですね。
通常の対戦ゲームなら、負けたあと、「なにくそ」と相手に勝つための工夫をする、
そういう楽しみがあります。
格闘ゲームをやるとして、一試合でやめてしまうひとは、なかなかいないでしょう。
相手を腕をみつつ、相手の弱点をさぐりつつ、勝つためにいろいろ工夫する、
対戦ゲームの面白さは、そういうところにあります。
このすれちがい対戦システムには、そのあたりの要素が欠けています。
何か、その点を補完するようなシステムが必要でしょう。
すれちがった相手のデータは、セーブしておいて、
いつでも再戦をいどめるようにしてみるのはどうでしょうか。
自分のマシンが負けたら、そのデータを見て、
勝てるようにカスタマイズして、再戦を挑める。
勝ったら、すれ違い時に勝利した場合に準じた報酬を与える。
これなら、すれ違いをしても負けばかり、という状況になっても、
モチベーションを持続させられるのではないでしょうか。
前回あげたとおり、「結果は一意に決定される」ため、
同じマシーンで何度も挑んでも、絶対に勝てません。
そこで、装備をとっかえひっかえ交換しながらいろいろ試してみる、
という、そういう楽しみ方ができそうです。
このあたりは、トレーディングカードゲーム(TCG)をやったことのある人なら、
面白さが理解しやすいでしょう。
相手のデックを研究し、カードを入れ替える、あの楽しさです。
そういえば、このゲームのシステムは、TCGのものによく似ていますね。
参考になる点も多そうです。ちょっと、TCGの面白さについても考えて見ましょう。
トレーディングカードゲームの面白さは、
収集・構築・プレイングの三つに大きく分類されます。
「収集」は、カードを集める楽しさです。
カードがそろっていく楽しみ、ほしかったカードを手にいれた楽しみ、
コンプリートしたときの感激。「収集欲」を刺激する楽しみです。
「構築」は、デックを組む楽しさです。
作戦やコンボを考える楽しみ、相手のデックを考え、それに対する対策を考える楽しみ、
そして、全体の構成をうまくまとめあげる楽しみです。
「プレイング」は、実際にゲームをやるときの楽しさです。
自分のたてた作戦通りにデックを運用する楽しみ、突発的なアクシデントに対処する楽しみ、
そして、勝利する楽しみ。
「収集」はちょっとゲーム性とは異なるので除外して考えましょう。
この「構築」と「プレイング」の2つの楽しみのうち、
今回のこのゲームは、「構築」に重きを置いたシステムです。
一般の、アクション系対戦ゲームは「プレイング」ですべてが決まるわけで、
ちょうどまったく逆の形になっていることがお分かりいただけると思います。
このゲームの求める面白さは、
「敵にどう勝つか、作戦をたて、それを遂行する方法を考える」
「TCGのデックを組むようにロボットを作り上げる」
部分です。
このとき、戦闘がラッキーヒットで勝ててしまうと、この楽しさは失われてしまいます。
たとえば、「1%で敵を必ず倒せる武器」というのがあったりすると、
100回繰り返せばだいたい勝ててしまうわけで、これは、上にあげた
「このゲームの面白さ」を阻害します。
「勝てない敵をなんとかしようとする」部分が、「何回も(無駄に)戦闘を繰り返す」という
作業になってしまう可能性があります。
もちろん、「1%で~」というのは極端な例ですが、
「作戦をたてて相手に挑む」という楽しさをボカしてしまうのは確かです。
つまり、「組み合わせによって結果が確定する」というシステムは、
この「作戦の構築に重きをおく」という面白さを浮き彫りにし、
何度も考えなおし、再挑戦して相手に勝つ、という面白さを提供してくれるのです。
逆に、「装備のパターンが少ないと、結果が簡単に予測できて面白くない」
「ラッキーヒットがなくなるので、強い敵には絶対勝てなくなる」などといった欠点も考えられます(*1)。
考えられますが、やはり、今回の設計には、「一意に結果が求まるシステム」は有益そうです。
この方向性で完成に向けてみましょう。
今回のまとめ。
● すれ違いで収集した対戦相手のデータは、セーブし、勝てるまで再挑戦ができるようにする。
● 求める面白さは、TCGでいう「デックを組む」楽しさ。
次回は、いよいよ、ロボットにどういうパラメータを持たせるか、という点を考えていきましょう。
(*1) 強い機体は、すぐ「それに勝てるセッティング」が攻略サイトで紹介されてしまいそうだけど……。
まあ、それはそれで楽しさ。ローカル部分では、「いじれば勝てる」という扱いでいいでしょう。