オンラインゲームにおいて、追加ディスクが出る意味というのを

考えたことはあるだろうか。

クライアントのダウンロード、DL販売、といった手法が

普通に使われるようになった今日において、

それでもなお、追加ディスクがパッケージ販売される意味、である。


だってそうだろう?

ライセンス料金をDL販売の形式で徴収すれば、

店頭に買いにいく手間は省ける。

ショップや問屋に卸す経費が節減できる分、価格も安くおさえられるし、

ダイレクトにメーカーの収入につながる。

それでもなお、追加ディスクを出す。

これには、当然理由がある。


まあ、そんなに難しい話じゃあない。

「人の目に触れるチャンスを増やす」ためだ。


オンラインゲームは、一度スタートしてしまうと、

なかなか非プレイヤー層の目にはとまらない。

運営側としては、なるべく「新規ユーザー」を取り込みたいわけだが、

なかなか新しいユーザーの目に止まるチャンスを作れない。

いままで、触れたことのないひとにこそ、積極的にアピールしたいのに、

なかなかそういう機会が作れない。

新作DISCを出せば、それは、店頭に並べられ、

広告も打たれ、絶好のアピールになる。

実際、多くのゲームにおいて、新規(途中)参入者が多いのは、

追加ディスクの発売前後なのだ。


そういう、「世間への呼びかけ」という効果は、

未だメジャーならざる市場においては、

特に重要なものである、という話である。



さて、非常に長くなってしまったが、以上は前フリである。

今日の本題は、HD-DVDの販売戦略である。

先日、発表された内容に、HD-DVDプレイヤーの販売価格を、

将来のコスト軽減を見越し、あらかじめ値下げした価格で販売する

という発表があった。

これは、一見、実にユーザーにありがたい話だ。


こういうプレイヤーは、時期がたてばどうせ安くなる。

その関係上、先に買ってしまったひとが、どうしても、割合で損をしたような

印象をうけてしまうわけで、それを払拭する手段といえよう。

なるほどいい考え……と、いいたくなる。


だが、冷静に考えてみると、これは、

全体の広告量を下げることになりはしないだろうか。


ハードの価格が下がるときは、当然、ニュースになるし、大きく広告がうたれる。

それまで購入を悩んでいたひとを後押しし、普及率に貢献する力をもつだろう。

そう、上の話を読んで見ればわかるとおり、値下げされた新機種の登場は、

MMOの追加ディスクの発表と同じく、未購入者への大きなアピールと、

販売促進力を持つわけなのである。


「はじめから値下げしておく」のは、逆にいうと、これらのデメリットを生むのだ。


そして、ソフトがそろわないであろう初期において、値段が低いことが、

それほどプラスにはたらくのかどうか。

私自身は、大いに疑問に思っている。

もちろん、出遅れたブルーレイ派に対し、先行逃げ切りをはかろうとする戦略は、

理解できるのだが……。

この方針は、ユーザーのことを考えているように見えて、

実は実効の少ない、「一部のマニアしか喜ばせない政策」ではないか、

と思っているのだ。


他の手段で、その「将来的なアピール不足」を取替えせるのか。

この低価格が、BD派への牽制として、はたして有効なのか。

この2点が、この方針の成否の分かれ目となるだろう。


……はたして、結果やいかに。