鈴木 銀一郎
ゲーム的人生論

ふいに本屋で見かけて買ってきたこの本。

なかなか面白かったので、紹介してみる。


コンピューターゲーム世代の人にはあまり知名度はないものの、

著者である鈴木銀一郎先生は、日本でのゲーム黎明期から

「ゲームデザイナー」を生業としておられるお方。

専門としているのはボードゲーム、

ウォーシミュレーションなどのジャンルだが、

そもそもゲームに関する見識がケタ違いに高いので、

十分に現在でも参考になる内容になっている。

本の内容は、半分ほどはその自伝であり、そこから導かれた、

「ゲームについて」の記述である。


本文中、「シミュレーションゲームの興亡」としてふれられた、

昭和50年代~60年代のシミュレーションゲームの隆盛と衰退は、

現代のゲーム業界の状態に通じるところがあって、実に面白い。

おっと、ここでいう「シミュレーションゲーム」ってのは、

ボードゲームとか、ウォーゲームとか、そういう類のシロモノだ。


そういえば、昨今の国内産シミュレーションゲーム(←コンピューターゲーム)は、

衰退いちじるしいジャンルである。

それを元とし、派生したジャンルには、まだまだ元気なものも多いが、

大本となったシミュレーションゲームは、半ば絶滅状態といっていい。

その原因とするところは、本文でふれられた

ウォーゲームの衰退のときの事情と、非常によく似ている。

いや、シミュレーションゲームに限らない。

例えばシューティング、例えば格闘ゲームなどの、

「衰退した人気ジャンル」のさきがけとして、同じ道を歩いていたことがよくわかる。

同様、参考になる場所は、さがせばいくらでもあるはずだ。


なにしろ、コンピューターゲームが国内で一般化する前から

「ゲームデザイナー」をやっておられる方なのだ。

その経験もハンパじゃない。

文中から読み取れるその見識に触れるだけで、

得られるものは多いと思うのだが、いかがだろうか。


とかく、ゲーム業界を志望する者は多いが、その歴史に詳しい人はなかなかいない。

そこから実践への知識を転用できれば、得られるところは多いはずだ。

そういう意味で、ジャンルへの忌避感がないなら、オススメしたい一冊だ。

「ゲームについて知る」意味で、勉強してみてはいかがだろうか。

文章も軽く、読みやすくまとめられている。