「おいでよ どうぶつの森」を購入して一週間ほど経った。
このへんで、いったん感想をまとめてみたい。


まずは、よくも悪くも、通信ありき、といった点。
通信を除くと、従来の「どうぶつの森」と
変わらないし、特にとりあげる点もない。
そして、通信部分に注目すると、
もっと大きなモノが見えてくる。


たとえば、まずはコミュニティの位置付けである。


従来のネットゲームでは、プレイヤー同士の対話は、
ゲーム中で行われるのが普通だった。
そこから現実でのつきあいになることもあるだろうけど、
あくまで、ゲーム内でのやりとりが

中心となったコミュニティが構築されていた。


だが、「Nintendogs」や「どうぶつの森」は、そうではない。


私の過去の日記をみてもらえばわかるとおり、
遊んだあと、インターネット上での
情報交換や対話が続いている。


「ゲーム中での会話」と「ゲーム外での会話」を比較したとき、
後者が圧倒的に多くなる
のが、この2つのゲームの特徴だ。


つまり、このゲームは、
「コミュニティをゲーム外にもっている」と言える。


ゲームはコミュニケーションのとっかかりを
作ってくれるものであり、その後の付き合いについては、
ゲーム側からさほどサポートしていない、ということである。


これは、実は、非常に重要な意味をもっている。




まず、他の、一般的なネットゲームについて考えてみよう。


ゲーム内で、コミュニティが

ある程度完結しているタイプの場合。

それらのゲームでは、そのゲームをやめると、
そのコミュニティから抜けてしまうことになってしまう。


「友人と会話ができなくなる」ことを望む人は、
そういないだろう。

コミュニティ内にとどまろうとすれば、
それは「ゲームを続ける」ということにもなる

この構造は「プレイヤーを引き止める」のに

最適のシステムになる。


これが、ネットゲームで普通に行われている、
「ユーザーの囲い込み」というやつである。


現在のネットゲームをみてみると、
これは当然のように行われていることであり、
むしろ、これをもって運営を成り立たせている一面がある。


適度に興味をひく素材を与えておけば、
あとはユーザー同士のコミュニティが、
プレイ人口を維持してくれるのだ。

ある意味理想的な構造といっていいだろう。



……ただし、知ってのとおり、これは、致命的な欠点を持つ。
要するに、「ゲームが売れない」状態に
なってしまうわけである。


いまさら説明する必要もないとおもうが、
長時間プレイするタイプのネットワークゲームを始めると、
なかなか他のゲームに手をだしにくくなる。


結果として、普通にゲームを買うよりも
市場に投資される金額が減るため、
ゲーム市場全体を見れば、マイナスの経済効果になってしまうのだ。


これは、過去のネットゲームが抱えていた、
構造的な欠陥であるといっていい。

ある意味で最強の武器であり、
ある意味で決定的な弱点であったのだ。




「どうぶつの森」が使った手法は、

上の致命的な弱点を克服したものである。


「どうぶつの森」の場合、つきあいの主軸はあくまで
インターネット上にある。

極論すると、ゲームをムリに続けてもらう必要はないのだ。

ゲームをやらなくても、会話や情報交換をすることは可能であり、

もし、別のゲームをやっても、まったく問題ないことになる。


どうぶつの森を介して作られたコミュニティは、
大多数が次のゲームに移動したら、
そのままみんなでそちらに移動するだろう。

ゲームが売れなくなることもないし、

ムリにゲームを続けることを強いる必要もない。


「前のゲームに飽きるころに、
 新しい楽しさをもった通信ゲームを発売する」


これを定期的に繰り返すことで、
コミュニティは自然と、次のゲームを買いながら、維持される。



Nintendogsの発売から、半年以上が経過した。


画期的なゲームではあったが、
当然、飽きてしまった人、
ついていけなくなってしまった人も多いだろう。
そこへ、新しい「すれちがい」をもったゲームを投入した。


結果として、どうぶつの森は、販売店の予想を越えて、売れた。



この構造は、上であげた手法そのままである


「どうぶつの森」を楽しんだ人は、
このゲームに飽きるころ、
また同じようなゲームが出てたら、きっと買うだろう。


同じゲームをやっていたひとが、
「**もはじめました! こっちでも遊びにきてね」
と言ったときのアピール力は、相当に高い。

Nintendogs2やどうぶつの森+が出たら、(出ないだろうけど)

こうなるだろうことは、容易に想像ができるんじゃないだろうか?


ユーザーに、コミュニケーションのよる楽しみを提供し、

ある程度囲いこみの恩恵をうけ、

さらに、ゲーム市場への投入金を下げない。


この、無理難題を見事に解決しているのが、

見てとれるんじゃないだろうか?


上であげた、MMOの手法に比べると、
拘束力では確かに劣る。
だが、ゲームは確実に売れるし、

市場にも明らかにいい影響をあたえる。


そしてなにより、健全だ。



ネットゲームは、数々の問題を抱えている。

いままで、そういったネットゲームに対し、
任天堂は、必ずしも賛同しない姿勢をみせていた。

それは、上のような問題があったからだと思う。

その問題への解答のひとつが、
今回の「どうぶつの森」だったのではないだろうか。


私は、任天堂の姿勢を応援したいとおもう。