初出:2005年07月06日
この記事は、旧サイト より移動してきたものです。
FF11でのツール使用問題が各地でかなり炎上している
ようなので、少しだけ。
事件自体は
「かなーり使い勝手のいい不正ツールが公表され、
ネット上で配られている」、というもの。
ツールの使用の是非などは、いまさら言うことではないので、
そんなことについては言わんけど、メーカー側の対処について、
「メーカー側がまったく対処をしていない」
と言われている部分だけ、
それは違うんじゃないかなあ、と思っている。
こういう問題について、どういう対処ができるかというと、
(1)技術的に禁止する
(2)規約的に禁止する
(3)仕様的に禁止する
という3つの代表的な方法がある。
それぞれがどういうものか、簡単に説明すると、
(1)は、プログラムでツールが入れこめないようにする
(2)は、GMがいろいろ調べて取り締まる
(3)は、それをやっても意味がないようにルールを変える
ということになる。
一見して、(1)や(2)は有効な手段に見えるけど、
実はどちらも、結果には直結しない方法だ。
セキュリティは、いくら精度をあげても
「いたちごっこ」を抜けられない。
ゲームのもつ性質上、プレイヤー側に
提示しなければならないデータが多すぎて、
セキュリティを維持しきるのがムリなのだ。
ガードをどれだけ固めても、穴はいずれ見つけられてしまう。
プレイヤーの人数と、GMの数を考えれば、
(2)もとても現実的とはいえない。
犯罪者をカンペキに取り締まっても、
定価を払えば転生できる社会では、
警察は何人いたってたりないのだ。
「全員取り締まれば解決だ!」などという風にはいかない。
だからこそ、(3)が
現実的な手段として、選択されてきたわけだ。
(3)については、思い返せば、さまざまな対処がなされている。
ファヴ・ベヒ・アダマン以降、トリガーNMが増え、
そもそもツールによる取り合の意義は低下している。
代替アイテムも数多く追加された。
いま、「取り合い以外、それに類する装備が手にはいらない」
っていうものは、そんなにはいない。
寿司による命中装備の意義低下で、
くだんのツールの名前にもなってる「アーガス」も、
わざわざ倒しにいくのもアホらしいNMになりつつあると思う。
要するに、スクウェアがとってきた対策は、
「ツールがあっても、
他のユーザーが致命的な被害をこうむらないようにする」
「なるべくユーザーに、ツールの存在を
意識させないようにしながら対処する」
というタイプのモノなのだ。
(1)や(2)をひそかにやりつつ、(3)をつかって、
ツールを使用したくなる状況を限定していく、というのが、
これまでの運営の方向だったのだ。
もっとはっきり言ってしまえば、運営がやってきたことは、
「NM取り合い」という隔離部屋を用意して、
そこにツール利用者を隔離する、
ということだ。
ツール利用者が、ほかに手を出して、
一般層に迷惑をかけることがないように、
一部の仕様にツール利用者を
封じ込めようとしていたわけだ。
そして、そのツール利用のメリットを
だんだんと小さなものにしていく。
「利用者がゲーム内に残る」「利用者を処罰しきれない」
という難点こそ残るけど、非常に現実的な方法だと思う。
まあ、感情的には不満がおおいに残るけどな。
今回のツールの機能で、「周りに影響を及ぼす」部分は、
敵の取り合いの部分が中心だと思う。
(寝狩りもあるけど……)
そして、その部分については、
「このツールが公開されても、致命的ではないように」
上のような対策が講じられていたわけだ。
中には、
「ツールの影響が一般層にも現れている」
とかいう意見もあるけど、
負けるとわかっている取り合いに参加しなければ、
「ツールの被害」はほとんど出ていなかったはずだ。
そして、被害が出そうな状況は、ずっと前から、
徐々に仕様で減らされてきていた。
この状況をもって、
「スクエニは対処をしていない」と言うのは、
ちょっと公正ではないと思う。
対処はしていたし、していたからこそ、
こんな致命的なツールが公開されても、
この程度の崩れ方ですんでいる、とも見れるわけで。
もちろん、1ユーザーの立場としてみれば、
「ちゃんと取り締まれよ!」とか
「プログラムではじけよ!」とか
言いたくなるわけなんだけどねえ……。
ともかく、「事前の対策」はある程度やっていたと、私は思っている。
ただし、その対策の方向性が
あっていたかどうか、についてはまったく別の話。
この辺は結果論だが、
「ユーザーに見えないように対策していた」ことの
デメリットは、やはり大きかった。
たとえば、このテの問題の対策として、
「ユーザーに不当手段を公開し、"やらないように"と布告する」
という手法がある。
最近では、「大航海時代オンライン」で、
不正な儲けが出せる不具合が発見されたときに
コーエーがとった手法だ。
会社としてはちょっと情けないが、
「やったら罰するよ」と明言することで、
ユーザーに強烈な抑止力を与えることに成功していた。
明言した以上、違反者にはかなり強烈な罰則を適用できるので、
その点でもメリットは大きいだろう。
黙ってバンにするより、
「やったらバンするからね?」って断ってから
実行する方が、反発もデメリットも小さいのだ。
「罰則を定める」という行為は、
実際にユーザーを罰することよりも、
「不正行為を抑止する」ことの目的である。
それを考えると、この方法は実に見事だ。
だけど、スクウェアがとった、上のような方針では、
こういう手法を用いることができない。
以前からツールの存在が確認されていて、
それに対する対処も
「ユーザーの目に見えるカタチでは」やってなかった。
ぜんぜんそういう姿勢を見せていなかったことになる。
対処・処罰を他のプレイヤーに明らかにしない、ってのは、
実は大きなメリットのあることなのだが、
結果として具現したデメリットは、あまりに大きかった。
この状況では、ユーザーに協力を求めることなど
とても出来なかっただろう。
批判するなら、そういう、運営の方向性のほうであると思う。
上であげた、1・2は、
「結局抜け道を探されてムダ」な手段である。
でも、それをやりつづけ、
取締りをしていることをアピールする必要があった。
ユーザーと共に歩く、という視点に欠けていた、というわけだ。
その点、その方向については批判すべきだけど、
「対策してなかった」という見方は、
ちょっと単純すぎるんじゃないかなあ、
と思ってしまうわけだ……。