初出:2005/04/02
この記事は
旧サイト より移動してきたものです。



RPGの戦闘のデザインというのは、結構大変なものである。
とりわけ、「印象に残る戦闘」を演出しようとすると、
これはもうかなりの難題になる。


ドラクエの戦闘は、システム上非常にカンタンなつくりになっている。
しかし、面白い。


歴代DQをやってきた人たちなら、「記憶に残る戦闘」の1つや2つはあるだろう。
一体何が違うのか?
DQの戦闘のデザインはどうなっているのか?

今日は、そのあたりを考えてみたい。



まず、最初に断っておくことは、
「戦闘のデザイン」は、「戦闘システムのデザイン」とはイコールでは結べない。
という事実である。


この2点、いったいどこが異なるだろう?



ヴァルキリープロファイルや、グランディアの戦闘システムは、
私の好きなタイプのものである。


それぞれに良さがあり、雑魚戦にしろボス戦にしろ、
とにかく楽しめる戦闘が行われる。

どちらもスピード感があり、画面を見ているだけで
存分に楽しめる。「戦闘システムのデザイン」だけをみれば、
相当なレベルにあるとは思う。


だが、一方で、この2つのゲームで
「印象に残った戦闘」があるかというと、
私の答えはNOとなる。


戦闘の楽しさやオリジナリティといった部分は
非常に強く印象に残っているが、
だからといって、
「よかった戦闘を1つあげると?」と問われると、
首をかしげる結果になってしまう。


確かに「戦闘はよかった」
だが「よかった戦闘」が思い当たらないのだ。


私の印象に残っているのは、「手に汗握る戦闘」である。
例をあげるなら、DQ3のゾーマとのバトルであるとか、
DQ4のエスタークとの戦闘であるとか、
FF11で苦難の上に勝ちきった戦闘であったり、
とにかく、苦労して、ギリギリで勝った戦闘であった。


あるいは、ストーリー上の重要な戦闘が印象に残っていることも多い。
MOTHER2のラストバトルや、
ファイアーエムブレムのカミュやアルヴィスといった
キャラたちとの戦闘も、色濃く記憶に残っている。



思い起こしてみてほしい。



記憶に残っている戦闘というのは、
「ギリギリの戦闘」か「ストーリー上重要な戦闘」かの
どちらかだったりしないだろうか?


後者はこの際おくとして、
(これはストーリーの工夫だし、今回語るところとは違うからね)
前者に着目してみると、「ギリギリの戦闘」というのは、
ゲームをやる上で非常に重要であることがわかる。


まあ、考えてみれば当たり前だ。

あっさり勝てる戦闘ばかりじゃつまらない。

いかに「ギリギリで勝てるようにする」かが
戦闘のデザインの肝と言っても過言じゃない。


「いい勝負」を演出する必要がある。


これをいかに演出するのか、というのが、今回話題にあげた、
「戦闘のデザイン」ということなのだ。

だから、「戦闘システムのデザイン」とはまた話が違う。


このデザインをする上でのポイントは、
敵を「とても勝てない」というあたりではなく、
「ヒヤっとさせられた」「ヤバかったけど、ギリギリ勝てた」
というレベルに設定する部分にある。


前述したヴァルキリーなどがこの条件からはずれるのは、
「勝つときは圧勝、負けるのは一瞬」というシステムだからだろう。


じゃあ、「ギリギリの戦闘」を作るにはどうすればいいか?



……最初に断っておくと、そういう戦闘を作るのは、
「バランス感覚」の問題じゃあないと私は思っている。


いくらバランスを調整しても、
RPGってのは、プレイヤーが勝手に自キャラを強くできる代物だ。


だから、どんなにいいレベルの敵を置いておいても、
プレイ次第であっさり倒されてしまうことだってある。

もちろん、それが悪いっていうわけじゃない。

RPGの育成ゲームとしての側面を見るなら、
「自由に強くできる」という要素は非常に重要だ。
「キャラを育てた結果として、敵にあっさり勝てる」という
ファクターもまた、必要ということもいえる。


「ギリギリの戦いを演出」し、なおかつ、
「キャラの育て甲斐があるゲーム」に仕立てあげる。

そんなことができるだろうか?


まず真っ先にあげられるのは、
「敵のレベルを高めに設定し、何度も挑むようにする」
という手法だ。

これは、昔のドラクエがよく使っている技法なので、
深く説明する必要はないだろう。


プレイヤーの行動範囲をあまり制限しないようにし、
ボスのレベルを
「そこにいけるようになるLVでは相当キツイ」ものにする。


たいていのプレイヤーは、一度そのボスに負けたあと、
キャラのレベルが上がるたびに
「今度は勝てるかも?」と思って挑むため、
「勝った戦闘はたいていギリギリの勝利」になる。

だからこそ、プレイヤーは「ギリギリの戦い」を味わい、
「強くなった実感」を得ることができ、
そのボスとの戦闘が強く印象に残るのだ。


非常に優れた技法である、といっていいだろう。
DQ3やDQ4が人気タイトルたりえた、
「戦闘システムの秘密」である。


ちなみに、FFは、これとは別に、
「勝利のカタルシス」を重視した
パズル調の戦闘を設計し、別系統を築くわけだが…
長くなってしまったので、この辺でやめておく。


ほかにも、天外魔境2などは、また独自の方法で
「ギリギリの戦い」の演出に成功しているわけなので、
興味があれば調べてみると面白いかもしれない。

とりあえず、以上。
要望があればまた。