映画『聲の形』感想:傷つき、それでも前に進む、深い人間ドラマ

1. 作品概要とあらすじ

2016年公開のアニメ映画『聲の形』は、大今良時による同名漫画を原作とした作品。聴覚障害を持つ少女・西宮硝子と、彼女をいじめた少年・石田将也が、高校生の時に再会し、過去と向き合いながら成長していく姿を描いた感動作です。

主人公の石田将也は、幼い頃に聴覚障害を持つ少女・西宮硝子にイタズラをし、いじめてしまいます。その結果、硝子は転校を余儀なくされ、将也は周囲から非難され、孤立してしまいます。

高校生の将也は、過去の罪悪感に苦しみ、自暴自棄な生活を送っていました。そんなある日、将也は偶然再会した硝子と再会します。硝子は笑顔で将也と接しますが、将也は過去の罪悪感から硝子と向き合うことができず、拒絶してしまいます。

しかし、将也は次第に硝子と関わりを持つようになり、彼女の優しさに触れ、過去の過ちと向き合っていく決意をします。一方、硝子も将也への過去の恨みつらみを捨て、彼と心を通わせていきます。

将也と硝子は、互いの傷を癒し合いながら、前に進んでいくことを決意します。しかし、過去のいじめが原因で、周囲の人々との関係は依然として複雑なままでした。

将也と硝子は、周囲の人々と理解し合い、共に生きていくために様々な葛藤を乗り越えていきます。そして、最終的に将也は硝子に許しをもらい、2人は新しい一歩を踏み出すのでした。

2. 登場人物と造形

  • 石田将也(石川界人): 主人公。幼少期に硝子をいじめたことをきっかけにいじめられ、孤立してしまう。高校生の将也は過去の罪悪感に苦しみながらも、硝子と再会し、過去の過ちと向き合っていく。
  • 西宮硝子(早見沙織): 聴覚障害を持つ少女。将也にいじめられたことをきっかけに転校を余儀なくされるが、明るく前向きな性格で周囲の人々と接する。
  • 植野真澄(佐倉綾音): 将也の幼馴染。硝子の親友であり、将也と硝子の関係を支える。
  • 永野千尋(大谷育美): 硝子のクラスメイト。将也を敵視するが、徐々に彼を受け入れていく。
  • その他: 登場人物以外にも、将也と硝子の家族や友人、聴覚障害を持つ人々など、様々な立場の人々が描かれ、それぞれの葛藤や生き様が丁寧に表現されています。

3. 作品のテーマ

『聲の形』の主要なテーマは、コミュニケーションと許しの大切さです。聴覚障害を持つ硝子と、彼女をいじめた将也という対照的な2人の主人公を通して、人と人とのコミュニケーションの難しさ、そして許しの力について深く掘り下げています。

将也は、幼少期のいじめというトラウマを抱え、周囲の人々とコミュニケーションを取ることを拒絶していました。しかし、硝子との出会いを通して、将也は少しずつ心を開き、周囲の人々と向き合っていくようになります。

一方、硝子は聴覚障害というハンデを抱えながらも、明るく前向きな性格で周囲の人々と接していきます。硝子は、将也の過去を受け入れ、彼を許そうとします。

将也と硝子の関係を通して、作品は、人と人とのコミュニケーションの大切さを訴えています。言葉だけでなく、心で繋がることの重要性を教えてくれます。

また、作品は、許しの力についても描いています。将也は、硝子に許されることで、過去の罪悪感から解放され、前に進むことができるようになります。

許すことは決して簡単ではありません。しかし、許すことで、自分自身だけでなく、相手も救うことができるのです。

4. 映像と音楽

『聲の形』は、京都アニメーション制作による美しい映像が特徴です。繊細な色彩と動きで、登場人物の感情を表現しています。

また、音楽も作品の世界観を盛り上げる重要な役割を果たしています。劇伴音楽は牛尾宣幸が担当しており、感動的なシーンをより一層盛り上げる楽曲が多数使用されています。

5. 作品の評価

『聲の形』は、公開直後から高い評価を得ており、第40回日本アカデミー賞では最優秀アニメーション作品賞を含む7部門にノミネートされました。また、海外でも多くの映画賞を受賞しており、世界中の観客から称賛されています。

映画評論家からは、繊細な人間描写、美しい映像、感動的なストーリーなどが評価されています。また、聴覚障害者への理解を深める作品としても高く評価されています。

6. 考察

『聲の形』は、コミュニケーションと許しの大切さを描いた作品であると同時に、現代社会におけるいじめや差別、そして障がい者への理解不足などの問題についても深く考察しています。

作品の中で描かれる硝子に対するいじめは、決して珍しいものではありません。聴覚障害を持つ人々に対する偏見や差別は、今もなお根強く残っており、多くの聴覚障害者が苦しんでいます。

また、将也が過去の罪悪感に苦しみ、周囲の人々から孤立してしまう様子は、現代社会における心の病の問題にも通じるところがあります。

『聲の形』は、このような社会問題を描き出すことで、観客に考えさせ、行動を促す作品となっています。

7. まとめ

『聲の形』は、傷つきながらも前に進む、深い人間ドラマを描いた作品です。コミュニケーションと許しの大切さを訴え、現代社会における様々な問題について考えさせられる作品となっています。

まだ『聲の形』をご覧になったことがない方は、ぜひこの機会に鑑賞することをおすすめします。

以下、作品に関するその他の情報です。

  • 上映時間: 129分
  • ジャンル: ドラマ、アニメ
  • 監督: 山田尚子
  • 脚本: 吉田玲子
  • 原作: 大今良時
  • 声の出演: 石川界人、早見沙織、佐倉綾音、大谷育美、松岡茉優、小野賢章、悠木碧、内山昂輝、斉藤壮馬、花澤香菜、石井マークス、杉田智和、神谷浩介、潘めぐみ、豊永利行、金子有希、石川由依
  • 主題歌: 「形而上 feat. Aimer」(Lisa)

8. おすすめの鑑賞方法

『聲の形』は、一人でじっくりと鑑賞するのがおすすめです。作品の世界観に浸り、登場人物の感情をじっくりと味わうことができます。

また、家族や友人と一緒に鑑賞し、作品について感想を語り合うのもおすすめです。

9. 関連作品

『聲の形』以外にも、聴覚障害を題材にした作品は多くあります。以下に、いくつかのおすすめ作品を紹介します。

  • 映画:
    • 『ベイビードライバー』(2017)
    • 『ベル・カント とらわれた美声』(2018)
    • 『サイレント・ハンター』(2019)
  • ドラマ:
    • 『サイレント・ボイス』(2016)
    • 『聞こえない私に、彼は囁く』(2020)
  • 漫画:
    • 『A silent voice』(大今良時)
    • 『3月のライオン』(羽海野チカ)
    • 『聲の形』(大今良時)

これらの作品も合わせて鑑賞することで、『聲の形』をより深く理解することができます。

10. あとがき

映画『聲の形』は、私にとって非常に印象深い作品です。作品を通して、コミュニケーションの大切さ、許しの力、そして聴覚障害者への理解の重要性について改めて考えさせられました。

この作品が、多くの人々に届き、少しでも社会を変えるきっかけになれば幸いです。