菫を貼り付けにした力を、引っ込めることもできずにいた。
菫もどうしてこんなことになったのか分からず混乱してる。
俺の方を振り返って理由を聞きたがってる。
・・・説明できない。力も戻せない。
いっそここから消えて欲しい。なかったことにしたかった。でももう遅い。
どうにもできない。この時間がすごく長い。気が遠くなる。
どうしようどうしよう・・・
『落ち着きなさい』
緑子姉ちゃんの心配そうな翡翠の瞳が、俺を正気付かせた。
『あ・・・』
姉ちゃんの背後には、ユカリ姉ちゃんに抱きしめられた菫の長い髪が見える。
服を着てる。
自分達の部屋だった。
おそらく緑子姉ちゃんはすぐに事態に気付いて、俺たちを部屋に戻した。
ああしていた時間は思ったより短かったのかもしれない。
ちょっとほっとした。
でも、もう一度見たら、菫がこちらを向くような気がして、逃げ出したくなった。足が動いた。
そしたら余計落ち着かなくなって、部屋を飛び出した。海の回廊をやみくもに走る。
心の壁に苦い錆のような味がべっとり貼り付いてる感じがする。
菫を拒絶した。
消えて欲しいとすら願った。
受け入れられない。
小さな俺。
半端な俺。
駄目な俺。
たかが裸見られんのがイヤだってだけで力使って――サイテーだ。自分だけが大事なんだ。
こんな自分、ちぎって棄てたい・・・