息が切れて立ち止まる。蓮湖の見える大窓の前・・・
自分の荒い息づかいがわずらわしい。
ハァハァ言うな、鬱陶しい!
一度渇いた唾を飲み込んで、ふと目を上げると人が立ってる。
『・・・』
立ってたのは雲様。なんだか辛そうだ。
でも人の気持ちを思い遣る余裕なんて俺にはなかった。
『何だよ。用なんかねえぞ』
そして用があるならさっさと済ませていなくなれ。
でも雲様はなかなか言葉を口にしない。俺は苛立った。
「用がないならあっち行けよ!」
そう言おうと息を吸い込んだ時、
『あなたにはガードがかかっている』
やっとしゃべった。『だからあたし以外の誰にもあなたは読めない』
『――』
それを伝えに来たのか?
『だが菫ちゃんには、あなたの強い気持ちは伝わる。だから落ち着きなさい』
強い気持ちって――
雲様は肯定するように黙って俺を見つめた。
『強い気持ちだけ?抑えらんないような強い気持ちだけ・・・?』
ということは・・・
『ダメだ・・・逆にしてくれよ・・・こんな気持ちは伝えたくないんだよ、絶対見せたくないんだよどうにかしろよ!』
雲様を揺すぶってYESを引き出そうとしたけど動かせるのは体だけだ・・・辛そうな雲様の顔。
『・・・あなたが主で菫ちゃんは従だ。あなたの川が決壊すれば菫ちゃんに流れ込む・・・守護とは、そういうものなんだよ』
そんな――
知らなかった・・・
そんなこと誰も――
『どうにもならないの・・・』
止めようがないんだ、どうしようも・・・
『・・・菫ちゃんが大人になって、聞きたくないとはっきり思えば、あるいは』
『あるいは?・・・どういうことだよ』
雲様はひとつ息をつく。
『菫ちゃんはまだ幼い。能力は未知数だ。瞳から推察するのみだよ』
俺は・・・ 俺は、一番そうしたくない相手に、一番ひどい気持ちを味合わせ続ける・・・そうなのか?
あんな小さい菫に、ぐちゃぐちゃな感情をぶつけ続けるのか?
ずっと?
窓の外は、あの日見た美しい宵。