紅は見る見る、ものすごく嬉しい顔になって私を抱きしめ、それだけでは足りなくて抱き上げてぐるぐる振り回した。
『うん!好きだ!俺も、好きだよ!菫!あははっ!』
ぎゅぅっともう一度抱きしめられて、ん~っとキスをされて、とてもとても幸せな気分になった!
私たちは二人で喜び合って抱きしめ合っていたけど、緑子様がそばに来て、
『菫ちゃん、じゃあご挨拶に行こう。もうお昼だわ。おなかも空いたでしょうし、親御さんも心配しているわ。時間もないし、あなたはまだ小さいから』
私はまだお父様を許してはいなかった。
『お父様は嫌い!行かないわ!紅とここにいる』
緑子様は辛抱強く言った。
『守護の気持ちを周囲が枉げることはできない。安心なさい。でも大切なお嬢さんをお預かりするのに、礼を欠くことはできないわ』
緑子様は不思議な方だ。逆らえない。
私たちは緑子様と一緒に家に行った。お父様もお母様もまだ家にいて、心配かけていたことを私は知った。
『度々失礼しております』
緑子様はまずそう言って丁寧にお辞儀をした。
紅も遅れて頭を下げた。
お母様が応接間に通すと、お父様もやってきた。
『わたくしどもの妹がご迷惑をおかけして申し訳ございません。お怒りはわたくしがお受けしましょう』
緑子様はそう言ってもう一度深々と頭を下げた。紅も倣ってぺこりとする。
『緑子様にそう言われては何もできない。妹の不始末も貴女が出れば簡単にチャラですな』
お父様はとことん意地悪だ。
『・・・わたくしは不始末とは思いませんのよ。むしろでかした、と』
緑子様はふふふって笑った。
紅が驚いて緑子様を見直す。緑子様はお父様から視線を外さない。
『手前勝手な事情でございますが、この子には逃れられない定めが迫っております。お嬢さんがいなければ妹は華瑶苑でたった一人暮らすことになっていた。わたくしどもは感謝しているのです』
お父様は黙って苦々しく緑子様を見る。そして少し身を乗り出して言った。
『これは意地悪で言うのではありません・・・だが必ず聞いて欲しい。私は娘に夫を持つことを望む。これだけは譲れない』
紅はみぞおちを押さえて息が止まっている。私はお父様のデリカシーのなさに頭が沸騰した。