ロマンティックエロティックグロリアス -121ページ目

紅の家の前で扉をくぐり抜けてからの私は、いつまでも覚めない夢の中にいるようだった。

見るものすべては美しく素晴らしく光り輝いて、私の目を奪い続ける・・・


湖上から戻って腰を落ち着けても、心は舞い上がりふわふわとどこかへ連れ去られてしまう――そんな私の手を紅はぎゅっと握り締めて、大丈夫だと知らせてくれる。

ほんとは、紅だって私と同じふうに気持ちは落ち着かないはずなのに。

この大好きな白い手が私の手を離さないでいる限り、私は安心していられる――



用意が整い、鳩が再び時間を教えてくれる。

開いた扉の先へは、もうお父様やお母様は一緒ではないことを、緑子様に背中を押されて知る。


『お父様・・・』


最後に見た父の姿はやはり、少し強引であたたかい、私の大好きな父だった。

父はただ私を見つめて、頬と髪の毛を撫ぜた。私の大好きな茶色のオニキスの瞳は、潤んではいない。ただ少し眉間が切なそうに見えるだけだ。


『元気でいろ』


ただそれだけ口に出し、おでこを手のひらでぐいっと撫で上げた。


『うん・・・!』


横から優しい腕が伸びて、お母様が私を抱きしめる。


『笑顔を忘れないでね・・・』


お母様のローズクォーツのやわらかいピンクの瞳は、もう涙であふれてる。お母様こそ、もう泣かないで・・・


そう思ってる私の目からも涙がこぼれる。

やっぱりお母様の娘だよ。

涙、止まらないよ・・・


『二人して、なんだ』


お父様がお母様ごと私を抱きしめた。

この力強い腕に支えてもらうことは、もうできないの――


『おっ・・・お父・・・様、お母様・・・大好き!だいすき!』

『うんうん・・・』


やがて温かい胸が離れる・・・柔らかい腕も、微笑みも、涙も・・・

その柔らかい空気が、風になって去ってゆく。


紅が、後から私の肩をがしっと押さえた。

私からことばを揺り起こすように、体をがくがくとゆさぶった。


『さ・・・さよなら!ありがとう・・・お父様・・・お母様・・・!』


鳩の瞳が白く発光し、扉が私たちを分ける。

お父様とお母様は、私たちが消えるまでずっと寄り添って見つめていた――