薄闇せまる路地で、 | ロマンティックエロティックグロリアス
薄闇せまる路地で、まだ小さかった私は泣きながら走っていた。
高い石垣が続く道を駆け抜けて・・・悲しみが体を占領して、突き動かされるようにただ走り続けていた・・・

『なんて顔してんだ、お前』

唐突に声が降ってきて、私は振り返り石垣の上を見上げた――群青に染まる空に薄茶の短い髪が風になびく・・・その男の子は黒い顔をして、不敵な笑顔を私に向けていた。

『笑ってみろよ』

こんなに悲しいのに!
私はその男の子をにらんだ。
すると、ふわっと体が浮いた――浮いてる!私はふわふわ浮いて、石垣の上の、男の子の前に降り立った・・・足から力が抜けて、へたへたと座り込んでしまう。

『ふぅん・・・』

その8歳か9歳くらいの男の子は私の涙を手の甲で触ってから、おとがいを持って顔を動かした。『・・・アイオライトだな』
そう言う男の子の瞳は、金色に輝くピンクのインペリアルトパーズだった。

青い青い景色に浮かぶ、煌く灯のような・・・
暖かく宵闇を照らすキャンドルの火のような・・・
男の子はそのまま、その美しい顔を近づけて、私のくちびるに彼のくちびるを重ねた――

くちびるを合わせるだけのキス・・・でも時が止まってしまうようなキス・・・初めてのキスだった。

くちびるが離れてしまっても、まだ夢を見ているよう・・・

『泣き止んだ』

彼がそう言ったので、聞いてみた。

『あなたは誰?ここで何してるの?』

彼はにやっと笑って、 『家出・・・』 と言うと急に振り返り、『やべっ!』と腰を浮かせた。私の心に女性の姿が映る・・・近づいてくる。
男の子は石垣を飛び降りて私に笑いかけると、『じゃあな』と言って駆けて行ってしまった。
程なくさっき視た女性が姿を現して、『逃げられた・・・!』と呟き、私を見上げた。

翡翠の美しい輝き!

女性はでも、彼を追うのを止めて私に向かって両手を差し出した。
私の体は再び浮いて彼女の腕に抱かれていた。

『送ろう。もう遅いから・・・お家はどこ?』

優しく聞かれて、家を教えない訳には行かなかった。