ふがいない僕は空を見た 窪美澄著 | 国内航空券【チケットカフェ】社長のあれこれ

ふがいない僕は空を見た 窪美澄著

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本屋大賞という全国の書店員さんが選ぶ賞があるんですが、その2011年の本屋大賞の2位の作品。
個人的に本屋大賞の作品は、直木賞や芥川賞より気になるという事もあり、しかもこれがデビュー作ということで余計気になってはいたんですが、タイトルの「ふがいない僕は空を見た」っていうのがどうもオッサンが読むには少々こっばずかしい感じがするタイトルな為スルーしていたところ、奥さんが買ってきて読んで「面白かった」って言ってたので読んでみることに。

本書は5編の短編がそれぞれ繋がっているという短編連作集。
その最初の「ミクマリ」という作品が第8回「女による女のためのR-18文学賞」を受賞したんだとか。
「女による女のためのR-18・・・ってなんじゃそりゃw」と思いながら読んでみると、最初から最後まで性描写、しかもコスプレ小僧の妄想みたいな感で読むのがキツい。
「なんじゃこれw」、と思い読むのを止めようしたら、「ここで止めたらアホだ。」と言われて読み続けることにしたわけです。

一編ごとに語り手となる人物は異なりますが、すべて関連しています。
語り手たちはそれぞれが心の奥に抱えている苦悩や悩みを吐き出していきます。
そういうわけでネガティブな描き方をしているにも関わらず、感じるのは不思議なことに肯定的なもので、なんともいえないささやかな感動がありました。
「人は正義感とか正しい事だけで生きてはいけない。未来のことは分からない。だって今みんな必死なんだから。」
ということを中年の哀愁ある人物ではなく、高校生の眼を通して描かれているのがスゴいと思ったのかも。
あと「性」と「生」と「出産」を高校生達を主軸にこんな風に描くなんて・・・と。
主軸となるのは高校生達だし、ライトノベルみたいなタイトルだけど、良質な文学作品でした。
社会問題なんかもサラッと盛り込んでおり、ふがいない大人としては考えさせられることも多かったです・・・
しかも読み終わった後はこのタイトルも素晴らしいと思ったし、読むのがキツかった「ミクマリ」の性描写すらもちゃんと昇華していていたんです。
本作がデビュー作っていうのも凄いなぁ・・・と。
才能がありそうな方で覚えておこうと思いました。

追記:本作は山本周五郎賞も獲られたみたいです。