旦那の隠しスマホを一瞬手から離してしまいました。
それを奴は見逃しませんでした。
スマホ目掛けて、ものすごい勢いで襲いかかってくる旦那。
危険を察知し私もとっさにスマホの上に覆い被さりました。
しかし、旦那は力づくで奪い取ろうとします。
ここで絶対に渡しちゃいけない!と、
旦那の手に噛み付く私。
それでも引かない旦那。
本気の男の力にはかなわず、
スマホは旦那に奪われてしまいました。
それでも決定的な証拠を壊されたり消されてたまるか!と
私も旦那のスマホを持つ腕にしがみつきます。
旦那は明らかにスマホを壊そうとしていました。
男の両手を塞ぐのは無理でも、
片腕を塞ぐことならできると判断し、
旦那のスマホを持つ手とは逆の腕に
全体重をかけしがみつきました。
旦那は「ごめん、ごめん…!」と泣きながら、全力で私を押し退けようとします。
私
「そんなにそれが大事かっ!?
そんなに知られちゃマズイことをやってたんだなっ!?」
叫ぶ私。
必死にキッチンに向かおうとする旦那。
瞬間的に旦那がスマホを水没させようとしていると察知しました。
私は全体重を旦那の片腕にかけていましが、
今度は逆に旦那の進行方向に向かって押し出しました。
全力で私を引きずっていた旦那は、
私が急に押し出した反動でキッチンを通り過ぎ、そのすぐ横の廊下に出ました。
廊下に出たあと、私はまた片腕に全体重をかけます。
旦那は片手で握り潰そうとしたり、データを消そうとしたりしていました。
しかし、
そんな簡単に潰せる訳もなく、
スマホを奪われないように庇いながらの片手での操作も上手くいかず、
ただただ私の手が届かない位置にスマホを持つ手を上げておくことしか出来なくなっていました。
深夜に1時間近く
全力でもみ合い続けた私達は疲れていました。
旦那のスウェットの襟や袖は伸びきっていて、
それを掴む私の指先も感覚が無くなっていました。
お互いが身動き取れなくなり、
私は作戦を更に変更することにしました。
私
「わかった。
こんなにもみ合って、私を力づくで押さえつけてまで守りたいものなら持っていきな。」
私
「消そうが壊そうが好きにすればいい。その代わりすぐに離婚して。」
私
「それ持ってすぐに出てって。」
旦那
「……」
私
「あんたが何をしたか、その中に何が入ってるかなんて、これだけのもみ合いをすれば一目瞭然。」
私
「男と女が出会い系で知り合って、LINEだけで済む訳ないじゃん。
そんなのそれ見なくてもわかってる。」
私
「浮気はもう確定している。ただ、あんたは最後まで自分を守ろうとして、反省も懺悔もできないクズだってわかった。」
私
「その内容を知られなければ、ここまでのことをしても結婚生活がこのまま継続できると思ってたの?逆だよ。」
私
「あんたの懺悔、反省なしに結婚生活は続けられない。逆に全て打ち明け、心の底から反省し、私の怒りを受け止める覚悟があるなら再生の道はゼロじゃない。」
旦那
「…………うん、そうだね…」
私
「そのスマホを渡せないなら、このまま出てって。離婚して。」
私
「あんたが全て打ち明けるなら話は聞くし、可能な限り再生の道を一緒に考える。」
旦那
「…………本当に?」
私
「私はあんたに嘘をついたことはない。私はあんたと違う。知ってるでしょ?」
旦那
「…うん、そうだね…。いつも嘘つかないね。」
私
「私を信じられないなら、それでいい。その時点で私達は終わってる。」
旦那
「…ううん、信じるよ…。」
私
「じゃあ、渡して。パスコード教えて。」
旦那
「………うん。」
旦那
「……あの、消したりしないから5分だけ待ってくれない?本当に何もしないから!」
私
「…信じられる訳ないよね?自分がしてきたことは?忘れた?」
旦那
「…そうだね。」
私
「あんたは私と違う。嘘ばっかりついてきたから今信じることはできない。
当たり前のことでしょ。」
旦那
「…はぁー…そうだね…。」
旦那
「…本当に再生の道を考えてくれるよね。」
私
「約束する。あんたが全て打ち明けるなら一緒に考える。」
旦那
「…うん…わかった……。
…こんなに時間かけて……
いろいろ、本当にごめん……
………はい…。」
2時間近く奮闘し、空も白みかけた頃、
ようやく私の手に最重要証拠のスマホが戻ってきました。