「しかし長えな・・・」
トシ氏の毛は想像以上に長かった。
うちにあるお粗末なハサミ・・・アタッチメントなしのバリカン・・・そして1本のクシ。
ううむ。
考えた結果1本のフローチャートが完成した。
北斗のザコ
↓
コボちゃん
↓
(スト2の)ガイル
↓
何とかt-Ace
この流れで間違いない。そしてミスは最小限に防げるはずだ!!
まずコボちゃんから取り掛かる。
ここで必要なのは「かりあげスキル」に尽きるはずだ。
チョキチョキチョキチョキ ウィーン
ウホ。やべえ。あたしかりあげ上手い。
彼の後頭部は緩やかな傾斜で綺麗にかりあげられていった。
Mission 1: コボちゃん → Clear!!!
いかん。・・・今にも噴出しそうだ。
「男の人をからかってはいけない」
そう。男とは意地とプライドで生きている。
笑ってはいかん。早く次の工程に移らなくては・・・
チョキチョキジョリジョリ ウィーン
ここにきて私に変化が生じた。
「おお!上手い!!」
「バリカン1本でこのクオリティーだよ!!!」
そうだ。さっきのコボちゃんで完全に天狗になっていたのだ。
トシ氏も「うん、そうだね、器用だね」と私を持ち上げる。
「美容師の資格とか取っておこっかな~♪」
ッジャッッ
(あああああっっっっ!!!)
何をやったのかは覚えていない。
アタッチメントなしのバリカン&クシで完全に天狗になっていた。
自分はプロになれると・・・。
彼の後頭部には「ひょうたん」みたいな形のハゲが完成していた。
そうだ、私は医者だ。
医者がちょっと(?)のミスで「ああああっっ!!」というだろうか。
患者は不安におののいて怯えだすに違いない。
そしてこのオペは失敗に終わるだろう。
Mission 1: (スト2の)ガイル → Failed!!!
ユジン・・・ごめん。
冬ソナのヨンさまが確変を外したときのセリフが頭をよぎる。
しかし私は作業を進めた。
前だけ・・・前だけでも・・・
Mission 1: t-Ace → Clear?
脂汗ビッショリだ。
前は何とかなった。後ろ・・・。トシちゃん見えないし・・・。
「おー、ちょっとちげーけど上手いじゃん」鏡を見て喜ぶトシ氏。
「でもなんかイビツだしさ、1000円カットでもいいから揃えてもらおうよ」と私。
揃えてもらうだ?
とんでもない。・・・美容師さん。
助けて!!!
「でもせっかく優子が頑張ってくれたんだからいいよ、これで」
「でもさ、伝えたい事はもう分かると思うしちゃんと揃えてもらったほうがいいよ」
そして三社祭もかきょうの夕方。
吾妻橋のたもとにある1000円カットへ。
「家で切ったんですけど、ちょっと不揃いなんで整えてくれますか?」
「うわっ・・・これはヒドイですね~」
空気読めYO!
鏡越しに謝る私。
さて。夕飯は何にしようか。
そうだ。トシ氏の好きな豚キムチにしよう。