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我が愛しのカルト映画

カルト映画に限らず、主に旧作を中心に【ネタバレ】全開で映画の感想を書いています。
細かい考察はできませんのであしからず。

弾丸特急ジェット・バス

The Big Bus

★★★

 

 

 

 原子力エンジンで走る巨大バス、サイクロプスがNYからデンバーに向けてノンストップの処女運行に出発するが、原子力エネルギーを脅威とみなす石油会社の妨害工作によってバスに爆弾が仕掛けられた!108人の乗客を乗せたサイクロプスは無事に目的地にたどり着けるのか?と、基本のストーリーは70年代に隆盛を極めたパニック映画の様相なのだが、全編これ、パロディとギャグが満載なのだ。冒頭のナレーションでは『大地震』『ポセイドン・アドベンチャー』『タワーリング・インフェルノ』『ヒンデンブルグ』といった名作パニック映画に挑戦状を叩きつけている。いい度胸してやがるぜ。

 

 

 

 このサイクロプスという名の巨大バス、その図体のデカさもさることながら、備えられた設備も魅力的なのだ。車内にはボーリング場やプールもあって、こんなバスが本当にあるのなら一度は乗ってみたいものだ。これなら長距離の走行も飽きないだろう。そんな楽しいバス旅行も爆弾が仕掛けられたことで一変する。運転手のダンは仕掛けられた爆弾を解除すべくワイヤーの切断を試みる。この手の映画ではお約束ともいえるシーンだ、その判断を誤ったことでパニックがパニックを呼ぶ。バスのスピードが落ちなくなって疾走するくだりは後の『スピード』の先駆けといえなくもない(な、わけないか)。

 

 

 ひとつの場所に様々な人たちが集うことでこの映画もグランド・ホテル形式を取っている。ダンはかつてバスの遭難事故から生還した唯一の人物だったらしく、どうやら乗客の遺体を食べてしのいだのだと噂されていて(アンデスの聖餐じゃないんだから)、サイクロプスの設計者のキティとは恋人同士だったらしい。副運転手のショルダーズは運転していると路肩に寄ってしまい、窮地に陥ると失神するという運転手としては問題のある人物。運転手もヘンなら乗客もヘンな連中ばかりだ。喧嘩しては仲直りを繰り返すおかしな夫婦とか、何があっても演奏を止めないピアノ弾き(演じるは『ブルース・ブラザース』のマーフィ・ダン)とか、ヘンな連中が揃っている。どこか陳腐に見えるのは、パニック映画のお約束を茶化してるから?

 

 今だったらCGでできるんだろが、実際に巨大なバスを作って走らせることでこれほど映画的な迫力がでるものなのか。クライマックスでは崖っぷちに停まったサイクロプスがシーソーの如くユラユラと揺れる。この危機をどう切り抜けるかは最大の見所でもある。メル・ブルックスやZAZが撮っていたのならばもう少しスマートになったという評も分からなくもないが、この大味な感じもどこか捨てがたくて、俺はこういう映画って好きだな。ところで、ストッカード・チャニングって、なんだかエリザベス・テイラーを野暮ったくしたみたい(失礼!)。

 

オリジナル版ポスター。クライマックスはまさにこんな感じ