ともともなのトライアルの日
お外のあの子は風邪を引いとった

目がショボショボして
くしゃみが出とる

そして次の日から
ご飯を食べなくなった

風邪症状はどんどんひどくなり
病院に連れて行こうと思った

ご飯を食べている子の中でも
1番のビビリちゃん

ご飯の用意をしている時も
遠くから私が離れるのを確認してから
ご飯を食べにくる


ご飯を食べへんもんやから
捕獲機なんかにも入らん

段ボールベッドで休んでいる時も
近づくと逃げてしまう子

どうすれば捕まえられるかと思いながら

忍足で近づき
何度かベッドに寝ているところを
捕まえようとしたけど
無理やった

風邪症状はどんどんひどくなる

目も開かなくなってきた

ご飯どころか水も飲まなくなって
毛もボサボサになってきた

1月29日
だいぶ弱っている

段ボールベッドで休んでいるところを
上から蓋をしたけど…
失敗した

もう今日が最後のチャンスかもしれんと
棒のついた網で捕獲を試みた

これが決定打になったんやろな


あれから1週間

あの子は帰ってこない

数年間ずっと我が家の庭にいた子やのに
帰ってこなくなった

私が帰ると
大きなお尻をフリフリさせて
みんなと一緒に迎えにきてたあの子

あんな状態の子が
この寒い中
どうしてるんやろう

ボロボロになったしんどい体で
必死で私から逃げていったあの子


何で私は見守ることができんのやろう

調子が悪くても
うちの庭には段ボールベットもあって
カイロを敷き詰めた毛布がある

そしてなによりも
一緒に過ごしてきた仲間がいる

あの子はきっと
棒を持って追いかけた私に
ここにくるなと追い払われたと思ったんやろう

一番大きいのに一番気の弱かった子

みんなに絡まれても
お腹を出してコロンと転がるだけで
やり返すことはなかった

調子が悪くても
寄り添ってくれる仲間がいたのに

いつも寝ていたあったかい毛布も
一緒に過ごしてきた仲間も
私が全部奪った

ずっとずっと安心できる場所だった庭を
追い出されたと思ったあの子

私は何でことをしてしまったんか…

こんな終わり方って…

普通に呼吸してても
息が苦しい

何を食べてもパサパサして味がない


でも…泣かんよ

泣いたらもうあの子は戻ってこんかもしれん

どんな姿でもええから
段ボールベッドに戻ってきて欲しい

もう捕まえんから

今度はちゃんと見守るから