玉樹(ジェクンド)大地震の義援金に関するご報告 | チベせん日記

玉樹(ジェクンド)大地震の義援金に関するご報告

大変遅くなりましたが、皆さまからお預かり致しました玉樹(ジェクンド)大地震の被災地に対する義援金、157,000円を7月30日にチベット人が運営する現地ローカルNGO団体に「直接」手渡ししてきてもらいましたので下記にご報告致します。

チベせん日記

チベせん日記

まず、義援金を渡すにあたり、受け渡し先として信頼のおける団体を慎重に調べた結果、内外(含むチベット本土)からもっとも推薦の多かった某団体(仮にAチームとする)へ送金することに決め、先に同団体へ送金していたある日本の方から連絡先及び担当者名を教えてもらい、5月11日、7月10日と二度ほどメールを送りましたが返信がありませんでした。


もしや検閲が厳しいのかもしれないと察し、(政府からは義援金その他援助はすべて政府を通すようにとの通達が出ていたので)T/T(電信送金)での送金はあきらめ、7月に西寧へ行く知人(以下Sさん)に預けて支援状況を聞きがてら手渡ししてきてもらうことにしました。

その時聞いて頂いた現地の支援状況は以下です。



・寄付(特に海外から)の受領について――今は政府の監視が厳しく、海外からの寄付を受取るのは非常に難しい。政府からの圧力もあり、支援団体でも活動休止に追い込まれたところもある。


・ジェクンドでの支援状況について――政府は、一般家庭に向けては80平方メートルの住居を、僧侶には18平方メートルの住居を用意すると言っている。しかし、想像してみて欲しい、この広大なチベットで、そのような狭い環境でこれまで暮らしてきたチベット人は一人もいない。政府はこの地域の生活文化を理解せず、理解しようともせず、そのような条件を住民に押しつけようとするので、住民側は反発し、住居の再建計画は暗礁に乗り上げている(ただし、2つくらいの村では政府と村人の合意ができ、再建が進んでいるらしい)。家や財産をすべて失い、さらに無理解な政府からはこれまでの生活文化を無視した扱いを受け、住民たちは二次的な被害を受けているといえる。このような中で冬を迎えてしまうのはあまりに危険なため、対策が急がれる。


・ジェクンドにはどのくらいの数の学校があるか?どのくらいの数の学校が倒壊したか?――小学校はかなりあるはずなので、把握していない。初中(中学校)は13校、高中(高校)は6校ありそのうち4校はジェクンド市内(市内というのがジェグですか?ジェクンドの細かい部分が良くわからなくてすみません)にある。ジェクンド市内の学校はすべて倒壊した。それぞれの学校で100人くらいの生徒がなくなった。そして、外に送られていくのは、すべてのジェクンド市内の学校に通っていた生徒たちである(ジェクンド市外出身でジェクンド市内の学校に通っていた生徒を含む)。送り先は四川、湖北などの中国人の地域である(その他、レコンに約350人、チャプチャに350人送られると聞いています)。ただし、外に送られているのは、中・高の生徒たちであり、小学生たちはテントで勉強していて、外には送られていないはずである。被災した学校や生徒に対して何かプロジェクトができるかという点については、これについては、教育庁が強い権限を持って取り扱っているため、そこに入って行ってプロジェクトをするのはかなり難しい。


・チベットサポート仙台からの寄付について――被災者の冬対策に利用して欲しいという意向ということなので、可能ならば、今回の募金額(10500元)を他の寄付とまとめて使わず、単体で使えるよう、1つの村でパッケージを配布するような形でプロジェクトを行なうようにする。ところで、寄付を頂く場合、被災者や被災地のために使って欲しいと言われることがほとんどなので、寄付の金額をすべて使いプロジェクトを行なっているが、正直に言って、私たちの団体の運営費・人件費などの費用についても若干でも良いので支援してもらえたらと常々思っている。政府から圧力を受けながらプロジェクトを行なうのは並大抵のことではないので、そういったことも考慮してもらえると有難い。


・会計報告について__プロジェクトが完了次第、頂いた金額単体の報告書を会計担当者から送付する。また、これら報告書が公開可能かどうかについてだが、ネット上での公開は(政府の監視が厳しい為)控えて頂きたい。ただし、団体のメンバー間でのシェアについては問題ない。


以上がジェクンドで復興支援活動をしているAチームの代表のお話でした。

最後に皆さまからの寄付に対し、「本当にありがとうございますとお伝え下さい」とおっしゃっていたそうです。
チベせん日記
義援金の受け渡し


次に、アムド某所で別の方(チベット人教師)からうかがってきてもらった内容が以下です。


・震災孤児について__ジェクンドで孤児になった子どもを養子にしたいと色々な方面に打診しているが、養子の件については、政府が一元的にコントロールしている状況のようだが、その条件として、夫婦そろって安定した仕事(=公務員)に就いていること、養子に対して、毎月最低でも1000元を使うこと等、ハードルが高い。


・被災したジェクンドの子供たちについて__ジェクンドからの生徒の受け入れは、レコンで350人、チャプチャで350人、それ以外の8000人近くが、中国内地に送られることになるらしい。


↑これについてうかがってきてもらったSさんの個人的感想は以下。


「私の個人的感想では、養子の安全や幸福など大事な問題がたくさんあるので、ある程度養子をとりたい人々に対する条件というのは厳しくあって然るべきだと思いますが、毎月子どものために1000元使うという条件はちょっと厳しすぎかな、と思いました。私が聞いたことがある5年くらい前の水準ですが、大学に子どもを送る親でも、たぶん年間500010000元くらいの負担だったと思います。それを考えても、小中学生の子どもに対して毎月1000元というのはかなり使いすぎだなという印象すらあります。その先生も指摘していた通り、内地の中国人の小金持ちだったら1000元くらい問題ないでしょうから、なんとなく中国人への養子を進めるための条件設定?と思えなくもないなと思いました。」


以上が今回、義援金を直接渡してきてもらったSさんからの現地レポートでした。

実際はもっと詳細なレポートなのですが、ここ一ヶ月、政府の取り締まりがより厳しくなってきているらしく、団体名や活動内容、及び支援状況を明かすと先方を危険に晒す可能性がある為、ネット上での公開範囲がどうしても限定されてしまうことをご理解下さい。

なお、詳細を知りたい方は、直接チベせんまでご連絡下さい。


被災地ジェクインドは10月に入ると夜は氷点下まで冷え込みます。

大寒波に見まわれた1995年の冬は最低気温氷点下45℃を記録したほどの極寒地方です。


"Save the Nomads!"プロジェクト(1996年当時)

http://hpserv.clearlight.com/~kt/nomad/news.html


そのような場所で今冬、多くの被災者はテントでの越冬を余儀なくされております。

被災地での支援活動は緊急の救済活動から衣食住の供給やインフラ整備等の復興支援に移っており、本格的な支援はこれからです。

そのような中、民間の支援活動まで妨害する中国政府の行為には強い憤りを感じますが、今後も粘り強く支援を続けていきたいと思いますので、ご理解とご支援のほど宜しくお願い致します。


最後になりましたが、この度の義援金にご協力頂いた全ての皆様に対し、この場を借りて御礼申し上げます。


感謝を込めて


チベせん拝