密漁容疑者からの弁明 | チベせん日記

密漁容疑者からの弁明

先日の日記に密猟云々のことをちらっと書いたが、長年なんちゃって漁(笑)をやっているとこの辺の線引きの難しさを痛感することがあるので今回はその話を書いてみたいと思う。


まず密猟の代表格であるウニとアワビについて。

チベせんが子供の頃は夏になると白いご飯としょう油だけもって海に行き、「雪合戦」ならぬ「ウニ合戦」を開催。

潜って拾ってきたあのトゲトゲのウニをリアルに投げ合って、


イデデデデッ!!!!


とやりながら海で遊んだ(笑)。

腹が減ったら拾ったウニを割ってごはんにのせ、しょう油をかけて即席のウニ丼にして食べた。

もちろんこれらは当時も密漁行為にあたるのだが、その場で食べるくらいは地元の漁師さんも多めに見てくれ、「おーい、持って帰んなよー♪」くらいしか言われなかった。そういえば密漁を注意する看板にも「持ち帰らないでください」とは書いてあったが、「採らないでください」とは書いていなかったような気がする。

自分たちが素潜りして遊んでいた浜は、近くに有名なキャンプ場があり、夏になると主に関東方面からのキャンパーで賑わうのだが、残念なことにある時期からそのキャンプ客の中に、ウエットスーツを着て片手に網を持ち、ごっそりウニを採って持ち帰る輩が現れた。

そんな輩が次第に増え、地元の漁協も看過できないレベルになって以降は海パンで泳いでいるだけで漁師さんが血相を変えて吹っ飛んできて怒られるようになり、やがてそこは遊泳禁止区域に指定、泳ぐことも出来なくなった。


この「泳げなくなった」のボディーブローが実はけっこう効いている。


ホンネを言えばウニ採りなんて面白半分でやっているだけなので別に取らなくてもいいのだが、(飽きるくらい食ったし・笑)こういう一般常識をわきまえないで大量に持ち帰ったりする輩が増えてきたせいで「合法的」に認められている魚突き(スピアフィッシング)まで密漁者と勘違いされてしばしば漁師と揉めるようになった。。


県条例によって詳細は異なるが、基本日本の海で「潜水具(酸素ボンベなど)」を用いず、「発射装置の付いていない手銛(水中銃はNG。あ、でも土佐銛はどっちにはいるんだ?!)」での魚突きは認められている。

ようするによゐこの濱口の「獲ったど~!!」ってヤツだ。


つまりまったくああいう格好で潜っているワケだが、たしかにウエット着てフィン履いてシュノーケルかじって潜っている姿を遠くからみると密猟しているようにしか見えないので、発見されると漁師が吹っ飛んできて、たいがいえらい剣幕で怒られる。

が、こちらは竿を投げるか自ら潜って突きに行くかの違いはあれど「合法的」に魚獲りをしているので、法を盾に冷静に説明するのだが、わざわざ怒鳴り込みにくるくらいの漁師だからたいがい魚場というフィールドを守る攻撃的ミッドフィルダータイプである場合が多く(苦笑)こちらがいくら法的になんら問題ない行為である旨を冷静に説明しても船上でジョジョ立ちしながら返ってくる言葉は、


「殺されてーか!!」


とか、


「沈めるぞ!!」




等、スパイシーな回答が多い(泣)。


当然魚突きをする者のなかには漁師と口論になる者もいるのだが、そうなるともう最悪で、近くでスキューバーダイビングをしている人までとばっちりをくらったり、シーカヤックまで追い出されたりと他にも多大な迷惑をかけてしまう場合がある。


そこである時、どうしたら揉めずに合法的な行為であることを理解してもらえるかを考え、監督官庁の一番上から一つずつ再確認していくことにした。


まずは水産庁に電話をかけ、潜水具を使用しない手銛での魚突きが日本の海で認められている行為であることの確認を取る。

水産庁の回答は、


「県条例で差異はあるが特に禁止行為には当たらない。詳しくは所在の県へ」


とのこと。ま、想定通りの回答。

ここで大事なのは後の具体的な説得材料になるので、いつ、どの部署の、誰に、確認を取ったのかを必ず覚えておくこと。


次に県の水産業振興課に電話をかけ、同じことを再確認する。

この時、県条例についても制定されているか否かの確認を取っておく。


結果、宮城県は条例も特に定めていないとのこと。

(聞いた話だが県によっては魚突きそのものは違法行為に当たらないが、水中メガネの使用は禁止、なんて県もあるらしい。それじゃ獲れるわけねーじゃん。。)


で、「ローカルルールがあるかもしれないので詳細は地元の漁協へ」と言われる。よし近づいた。


さぁここでようやく本命の漁協へ電話をかけたわけだが、予想通り開口一番、


「そんな行為はいっさい認めていない」


との回答。

そこで水産庁から県に至るまでいつ、どの部署の、なんという名前の担当者に合法的な行為である旨の確認を取ったのかを詳細にわたって説明すると、漁協の電話口に出た担当者は「う~ん。そんなこと認めてないんだけどな~(汗)」を繰り返すばかり。


結局、なんら法的な根拠を確認することもなく今までは、


自分たちの共同漁業権がある海域=オレ様の海


という論理で他所者は自由に排除してきたワケだ。

まぁでもそこには現行の漁業法自体があまりにも古く(ほとんど100年以上前の明治漁業法を踏襲している)、ゆるゆるで解釈の仕様によってはいかようにも解釈出来るという別の問題もあるのだが、こちらとしては法律問答をしようと言うのではなく、ただ単に魚突きをしたいだけなので、いらぬ争いを避けるべくこうして事前に連絡をしている旨を述べると、


「私の方ではこれ以上なんとも申し上げられませんので、実際の漁場の支部長に確認して下さい」


と、支部長さんの自宅の電話番号を教えてもらった。

もちろんソッコー支部長さん宅に電話をかけ、漁協におこなったのと同じ説明を繰り返しながら、


「毎年潜っていると漁師さんと揉めるのですが、法的に問題ないとはいえそちらの漁場なので今年はこうして事前に仁義を切ってご連絡致しました。我々は密漁者ではありません。ただ単に魚突きをしたいだけで第一種共同漁業権の対象となるもの(ウニやアワビなど)はけっして採りません。だいたい密漁者だったらわざわざいついつそこに潜りますなんて電話かけませんよね?」


と申し上げると、G支部長さんも苦笑いしながら、


「う~ん、聞いたことねぇし、オレのほうでなんか許可証みたいなもの発効出来る訳じゃねぇけど、まぁなにかあったら支部長のGに連絡入れてあるって言ってくれや」


と、ようやくご理解のある回答を頂いた。(あぁここまで長かった…)

しかもG支部長さんが事前に支部所属の漁師さんに伝えてくれていたらしく、この時は潜っていても一切咎められることなく魚突きをすることが出来た。


とまぁ長くなったけどようは地元のルールを尊重して誠意をもって接すれば漁師さんにも理解してもらえるのだということ。

しかもその誠意も極めて一般的な常識の範囲内であるということ。

ようするに仕事や日常生活の人間関係と同じで人から信用を得るにはコツコツと地道に信頼関係を築いていくしかないのだ。

余談ながらいつも一緒に魚突きしにいく面子は今ではG支部長さんちに一升瓶持って遊びに行くくらいの関係を築いている。


釣りも魚突きも一緒。

気持ちよくレジャーを楽しむために、また限りある資源を守るために漁場でのルールやマナーはきちんと守りましょう♪