「だって ・・・コワイから。」 | 練習帳

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尾上美由紀は 外出には マスクがかかせない。
たとえば いまのジキなら インフルエンザ。春や秋なら花粉症。
「なったら コワイから。」
それで マスクをつける。
マスクでかおをおおい ときにはゴーグルのようなめがねもつける。
手袋ももちろんかかせない。
家に戻ると着てる衣服は全部抜く
[病気になったら コワイから。」
うえからしたまで全部脱いで 洗う。
手袋は荒い、手も洗う。うがいもする。
主人とこどもにも うるさくいう。けれどコドモはともかく 主人は 「ああ?」みたいなかおしかしない。わかったわかったと いいながら わかってない。
それでもかえってくるときはまちかまえる。
全部脱いで いうために。 家の中に病原菌がはいったらいやだから。
外出がイチバンいやだ
ほら 電車のとなりのひとが せきしたりしてる。いやだいやだ なんてめいわくなの・
マスクしてきてよかったわ。
せきしながらマスクもしてないなんてしんじられない。
みんなそうだから そとは バイキンばかり。

実際インフルエンザにかかったことは あまりない。こどものころにあったようなきはする。
あれはとても しんどかった。
花粉症も まだ起きてはいない。

でも それは 毎日ちゃんとマスクしているからだと 信じてる。

スーパーで 並んでるとき (その日の列は すごく長かった) 美由紀のすぐうしろに
おばあさんにつれられた 可愛いおんなのこが並んでた。
おかいものは 女の子のお菓子かな て 一品だけ。
「おさきどうぞ」美由紀は譲った。
おばあさんは 感激を全身であらわして
「ありがとうございます。すみません」を 連発した。
ちょっとぬくいキモチで おんなのこをみた マスクの下から微笑みながら。
すると
おんなのこは はっ とたじろいてから
ひきつけんばかりに 泣き喚いた。
ものすごく本気で 泣いていた。美由紀はうちのめされた。

戻って衣服を脱ぐまえに 自分の姿を鏡に映してみた。

ああ

わたしの姿は


ものすごく コワイ。







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