休憩時間が終わって、
誰もいなくなった休憩室を片付けてたら、
いつのまにか後ろに君がいた。
そういえば休憩のとき、居なかったよね。
どうしてたの?と聞こうとしたけど、それより早く
「この土日、家に帰ってたんだ。」て君が言う。
ああそうそう、君は関西のひとじゃなかったんだった。
「・・・うん、ちょっと用があって。もう済んだんだけど。」
君の顔が一瞬曇ったように見えた。
けど私がどうしたの?て聞く前に、
(まるで聞かせないような感じで)
笑顔になって、あのいつものちょっと恥ずかしげな笑顔で、
「はい、お土産」
私の掌の上に焼きチーズタルトが載せられた。
メーカーはモンテール。
名前に覚えが無いけどもこのマークには見覚えがある。
そうだ、コンビニのシュークリーム。
私の好きなやつ。
「横に『期間限定、地域限定』て貼ってあったからさ、
こっちじゃ売ってないのかな、って思って。」
そうなんだ、地域限定モノなんだ。
128円てかいてある。
「・・・安くてごめん。」
そんなに申し訳なさそうな顔するから、吹き出しちゃったよ。
「あ、隣にあった生チョコのケーキがすごいうまそうだったんだ。
ちょっとでかくてさ、・・・このくらいかなぁ・・・
あれはひとりじゃあますかもしれないね。」
そうなの?じゃあそれにすればよかったのに。
知ってるよ、君がチョコレートケーキ好きなのは。
クリスマスのケーキだってチョコにしてたでしょ。
ちょっと大きいなら、2人でわけたらちょうどじゃない。
心の中でそう話してみる。
だけど君はまるでちゃんと聞こえたみたいに、
「でもバレンタイン用だったみたいだし、俺、男だし。それに、」
それに?
「・・・あなたチョコよりそっちのほうが好きでしょ。」
え?なんでわかったの?
今度は声にだした。
すると、君はうつむいてしまって小さい声で、
「・・・だって、俺見てたもの。
あなた、ケーキとかあるとき
チョコとベイクドチーズとあったとしたら、チーズ選んでる。」
そっか、見てたんだ。
ありがとうって言ったら、嬉しそうな笑顔みせて
君はまたどっかへ行ってしまった。
帰りの電車でこっそり食べてみた。
(だってボックス席だったし、空いてたし)
一口かんだらほろりと崩れて
チーズていうよりミルクのような
甘い香りがふわりと広がった。