数日前、中国で非常に評価の高いインディー開発者の文章を読みました。そこで紹介されていたのが、AIサイト 「Raphael AI」 です。特に印象に残ったのは、サイトを 32言語にローカライズしたことで、SEO流入が明確に伸びたという点でした。
Google Search Console を見ると、検索流入は英語や一部の主要言語だけに偏っていません。アラビア語、ヘブライ語、ポルトガル語など、いわゆる「小言語」の検索クエリが大量に出現し、しかも継続的に自然検索からユーザーを連れてきているのです。中には、本人が普段まったく触れない言語のキーワードもありました。
つまり 32言語の国際化によって、本来なら届かなかった言語圏の検索需要を掴んだ ということです。プロダクトは特定の国だけで回るものではなく、世界中の複数言語市場で「検索され、クリックされ、利用される」状態になっていました。
この話を読んで、私は次の疑問を持ちました。
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32言語でこれほど自然検索が増えるなら、サイトの言語は 多ければ多いほど良い のか?
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大きなチームも潤沢な資金もない、私のような個人開発者にとって、現実的に 何言語まで が妥当なのか?
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AIによって多言語化は昔より簡単になったとはいえ、最初から30言語以上に広げるのは本当に必要で、適切なのか?
この疑問を抱えたまま、ChatGPTなどのAIとも対話しながら整理していった結論はこうです。
結論:個人開発者にとって、言語数は「多いほど良い」ではなく、明確な最適レンジがある
多言語化に取り組むとき、多くの人は「グローバルにするなら主要言語を全部載せよう」と考えがちです。ですが実際にやってみると、言語を増やしただけでは価値になりません。
本当に意味がある判断基準は、次の3つだけです。
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検索で見つけてもらえるか
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来訪後に内容を理解できるか
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その先で転換(登録・利用・購入など)する可能性があるか
多くの実例から見ると、サイトにとって合理的な言語数は 10〜15言語 に収まることが多いです。20言語を超える と、「見た目は国際的だが、効率は下がる」状態に入りやすくなります。
まず押さえるべき「基礎の6言語」
ほとんどのサイトが避けて通れないコア言語は以下です。
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英語(グローバル検索のデフォルト)
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スペイン語(スペイン+中南米)
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ポルトガル語(特にブラジル)
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フランス語(欧州+フランス語圏アフリカ)
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ドイツ語(収益性が高い)
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中国語(人口・検索ボリュームが大きい)
この6言語だけで、世界の「価値ある検索需要」の大部分をカバーできます。
次に伸びやすい高コスパ市場
基礎の上で、長期的に効きやすい追加言語は以下です。
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日本語・韓国語(ユーザー品質は高いが要求も高い)
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インドネシア語・トルコ語(成長市場で需要が堅い)
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ロシア語(検索ボリュームが大きく、独自圏)
ここまで対応できれば、すでに「成熟した国際サイト」と言って良いレベルです。それ以上は、得られる増分が小さくなりがちです。
言語を増やしすぎると、SEOはむしろ難しくなる
言語追加は、品質が担保できる場合にのみプラスになります。現実には次のコストが増えます。
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hreflang等の運用が複雑化する
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各言語で十分なコンテンツ深度が必要
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機械翻訳の量産は「薄いコンテンツ」と見なされやすい
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薄いページは成果が出ないだけでなく、サイト全体評価を下げうる
結果として、個人や小規模チームでは 10言語を高品質で運用する方が、30言語の翻訳ページ量産より成果が出る ことが多いです。
現実的な言語セット例(上限の目安)
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中国語(簡体・繁体)、英語、スペイン語、ポルトガル語(ブラジル)、フランス語、ドイツ語
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日本語、韓国語、インドネシア語、トルコ語、ロシア語、イタリア語
最後に一言
国際化の本質は「全部やる」ことではなく、**「狙いを外さず、きちんとやる」**ことです。
プロダクトや収益モデルがまだ安定していない段階で言語数だけ追うのは、成長よりも複雑さを増やす可能性が高い。
本当に強い国際サイトは、言語数が多いから強いのではなく、対応している各言語が“ちゃんと成立している”から強い のです。