行きつけのペットショップ。

毎回、犬を眺めにくるこの私を
店員は、苦笑いな目で見てみぬふりをする。

ここは、動物園じゃないことくらい分かってるがやめられない。

また今日もお気に入りのブルドックを見て1人でニヤケた。
このブルドック、小学校一緒だった山根そっくりだ。いや、あのコンビニの深夜のバイトくんにも似てる。

ぷふっ。
ニヤケる私の後ろに人影あり。

振りかえると
同じくブルドックを見てニヤケるサラリーマン1人。
ぷふっ
私たちは、目があった瞬間笑った。

「可愛いですよね~。」

「ね~!」

会話をいくつか交わした。

そう、ここで私たちは出会った。←と、ドラマや映画ならこう続く…

しかし、サラリーマンは小学校一緒だった山根そっくりだ。

私の白馬の王子様は違う違う違う違う違う違う。
と、笑顔で空気と一体化しながらペットショップを後にした。

外は、急に雨な景色だった。
まじかよ。
傘ないし。
どーする自分。

通行人を見つめる。
賢く折り畳み傘をさして歩くパンツスーツな女が前を通過。私はといえば、茶髪にブラックサングラスサテン生地のワンピースにハイヒール。なんか、なんだろうイラってきた。
こうゆう人間もいればあぁゆう人間もいる。

濡れますよ?傘入りますか?
濡れますよ?傘これあげます!
なんて男いないかしら?

しばらく入り口でチワワポーズとってみたけど、世の中そんな甘くないのね。
そんなことをしてる間に山根がペットショップから出ていく…ビニール傘をさしながら…

チッ山根入れろよ!とまたイラっとした。

びしょ濡れになりながら足早に駅に向かった。

地下をぬけて最寄り駅到着。
だいぶ髪は乾いた。
ただ、その代わり電車のシートは濡らしてしまった。まぁ、良しとしよう。

1人暮らしの夜は、暇と孤独が隣にいる感じ。
とりあえず駅前のレンタルビデオショップでDVDを借りることにした。

同じとこを何度もぐるぐる。なにが見たいのかも決めれず、ぐるぐる。

最近流行りの海外ドラマを手に取った。
シーズンワンかぁ…。
シーズンファイブまであるぞ。こりゃハマったら金欠な私には生き地獄だな。

あっさり、やめた。

ラブコメディー嫌いだし
泣けるのも嫌
サスペンスも疲れるし…
残るは
ホラー系。

またホラーに手を伸ばした。
じゃあ、『ゾンビの村』にしよう。
いかにもつまらなそうだが、なにも決められずに帰るよりマシだ。
これに決めたぞ。
その瞬間18禁からでてきたおじさんと目があった。
足早におじさんレジに行くから、二番目にお待ちの方になっちゃった。

見る気はなかったんだ。
ごめんよ、おじさん。
おじさんの借りたDVDのタイトルを見てしまった。

『熟女の祟り』
うっぷす。
祟り?
あら?ホラーなのか
18禁なのか
気になってしかたなかった。
とにかく恐ろしいタイトルだ。

さて、私のレジの番。
いつものイケメン店員だ。
イケメン君の名前は、山根君。

いやいや、さきほど紹介した小学校一緒の山根とは違うから。
違う人物だから。

山根君は、今どきな髪型でちょい小麦焼けなお肌に美形な顔立ちである。
金曜日の夜8時以降から閉店までいる。
詳しいでしょ?
毎日、通ってチェックした。山根ファンですがなにか。

ピッ

「あのぉ…違ったら申し訳ないのですが…中野マイカさんじゃないですよね?」
「えっ…」

レンタルショップには誰も他に客はいない。
ここに中野マイカは1人しかいない。
黙り込んだ中野マイカ21歳。

「覚えてないですよね?…山根です。山根リョウです。」
「まじぃー!?( ̄□ ̄;)!!」

最近の流行りのラブソングがかかるレンタルショップに自分のアホな声が響き渡った。

あのブルドックにそっくりだった山根だぞ。
あの山根がこの山根?

「まぢ!?( ̄□ ̄;)!!」
もう一丁、まぢを連発。

「あっ、いらっしゃいませ!」
客、来店。
山根焦る。

あははと驚きすぎて笑うしかないよね。

客、レジ来る。
山根仕事に戻る。

とりあえず
あっ
あっ
あっじゃあと手を振り
微妙な空気の中レンタルショップを出た。

山根が
山根が
山根がイケメン。

心臓が張り裂けるかと思った。
しかも、「まぢ」しか発することのできなかった自分に後悔した。

頭がパニックだ。
そんな時は、コンビニへ行こう。あっ、またブルドック似の店員だ。まっ、どーでもいー。それどころじゃない。

ロング缶ビールとチーカマとさけるチーズと…さけるチーズスモーク味ともう1つ缶ビールを購入した。

今夜は、飲むっきゃない。
1人パーティーだ。
だって
ブルドック山根が
あの山根が
あの山根君だったのだから。



《続く…かもしれない》