【あの会社が儲かる理由(3)~戦略なんてない~】
これまで2回に渡ってオンデーズの田中修治氏の話をお伝えしてきた。今回はシリーズ最終回。
なぜ人は働くのか?この問いはある意味タブー視されているのかもしれないが、ここにこそ真実があるのではないだろうか。そして最後、田中氏がオンデーズの戦略を語った。
【バックナンバー】あの会社が儲かる理由
その1 宴会が会社を強くする
その2 階段は1段ずつのぼる
【関連記事】
不景気に逆行するメガネ屋社長が語る8つの経営術(1)
経営術その1 不景気は考え方次第
経営術その2 業績不振を不景気のせいにしてはいけない
経営術その3 特定の取引先からの収益は全体の30%以内に抑える
経営術その4 買ってもらう工夫を怠るな
不景気に逆行するメガネ屋社長が語る8つの経営術(2)
経営術その5 他の商売に手を出すな
経営術その6 自分のことは一番最後
経営術その7 ノウハウ本は読むな
経営術その8 情報は街中で盗め
比較対象によって、評価は大きく異なる
ガイド:会社を経営していると比較されるだろうし、自分でもそうしてしまうのではないかと思いますけど、その点どうですか?
田中氏:比較されることはけっこうありますけど、どこと比較するのかによって評価も全然違いますよね。
たとえば、ソフトバンクさんとか、グリーさん、楽天さんと比較されたら、僕の会社は足元にも及ばない。
でも一方で、高く評価してくれる方もいます。どっちが正しいのかは判断できないから、自分は自分でいいんじゃないの?って思います。
上を見てもきりがないし、下を見てもきりがないのだから、だったら見ない方がいい。それに企業の価値は会社の大きさや時価総額じゃなくて、そこに関わる人がどれほど豊かになっているかじゃないのかなと、最近はそう思います。
みんなお金が必要だから働いている
ガイド:物事のきっかけは、例えば社会のためとか、困っている人のためとか、美しく語られることが多いですよね?
でも一方で、「こいつには負けたくない」「見返してやる」というような気持ちで物事に取り組むことも実際にあります。
正直いって、私もそういう気持ちで取り組むこともあるけれど、それを表に出してしまうとあまりいい顔をされない。お金のためなのか?とか言われたり。
田中氏:社会的にいいことをするのは否定することではないし、実際に社会のために活動をしている人もいますよね。
でも、ビジネスとはまた違うと思うのですよ。社会のためだから給料を減らしたり長時間働いたりすることと、
社会的な奉仕活動のようなことは切り離して考えないといけないと思います。なぜならば、みんなお金が必要で働いているから。
社員と食事をしているときにリアルな声を聞くと、夢や希望も必要だけど、でもそれ以上にお金は大事なんだと感じます。
たとえば、子どもが来年小学校に入学するという父親であれば、学費とか習い事の月謝、生活費とかすごくお金がかかるんだから、
その彼は前提条件として一定以上のお金がなかったら精神的に豊かな生活がしていけないんですよ。これは現実的な話です。
そこでお金のために働くことを否定してしまったら、そもそもお金によって経済が回っていくこと自体を否定することになってしまいます。
もちろん、稼いでいる人が勝つとか偉いとかそういう話ではなくて、事実としてお金が回らなければ経済は動かない。だったら、お金が回るようにしようという考えを共有して、お金を稼げばいいだけですよ。否定される要素はないでしょ?
ガイド:お金を稼ぐということがベースにあると?
田中氏:お金を稼ぐということがベースにあって、そのうえで、じゃ、自分たちは何を通してお金を稼いでいくの?って話になるんでしょうね。
僕で言えば、メガネを通してお金を稼ぐことになります。でも、ただ単にメガネを売るのではなくて、これまで3万円、5万円のメガネを買っていた人は、それが5000円とか7000円になったら嬉しいよねという発想です。
そうすれば、オンデーズがメガネを売る価値が出てくるわけで、それに加えて他にないデザインとか他で受けられないサービスを提供しようってことです。
買いに来てくれている人がその瞬間だけでも嬉しいとか楽しいと思ってくれるのであれば、その対価としてお金をいただく。そういう仕組みなのだと思います。
命をかけてやるべきこと
ガイド:オンデーズの社長として、これだけは譲れないのはどういうことですか?
雇用しているたくさんの人の生活を守るため、今日も彼はとびまわる。
田中氏:僕の商売はメガネを売ることなので、それに命をかけているのかと言われれば、実は違います。
僕が命をかけてやらなければならないことは、雇用している何百人という人とその家族の生活を守ることなんです。
オンデーズをやると言ってたくさんの人を巻き込んだ責任があるから、そこは守らないといけない。だからメガネが売れないのであれば、他の何かを売って商売を成り立たせて、雇用した人たちの生活を守るのが僕の本質です。
だからメガネ業界で1位になるために他の人が犠牲になるのであれば、1位になることを目指す必要はないと僕は思います。むしろ、そんなことをしたら本末転倒な気がするんですよ。
戦略なんてない
ガイド:オンデーズの戦略は?
田中氏:これといって戦略なんてないんです。一生懸命いい商品を創って、今日よりも明日は更に良いサービスができるように一生懸命努力して、
足りなければもっともっと努力して、それを一人でも多くの人に買っていただく。それがオンデーズの戦略です。それ以上でもそれ以下でもない。
先月入荷した商品よりも今月の方がよくなっているか?先月よりもいいサービスができているか?それを全社員で真剣に問い続けていくことがオンデーズの戦略です。
ガイド:それが階段をのぼっていくことですね?
田中氏:それを突き詰めていくしかないと思うんですよ。何もテクニック的なことはないんです。1つ1つの積み重ねがノウハウになるんだし。
ガイド:徹底して追求していくことによって、モデルができるということでしょうか?
田中氏:たとえばディスカウントをするのであれば徹底してやって成功すれば、それは1つの成功モデルになります。
だから、どれがいいとか悪いということではなくて、一番の問題は、徹底してやらないといけないということだと思いますね。
自分の理想像に向かって徹底して追求していく。それが商売だと思うんです。だから、正解なんてない。
いろいろな人がいろいろなビジネスをやっているけど、ビジネスモデルとしてはみんな正解なんだと思います。
ただ、徹底的にやらないからうまくいかなくなってしまうのではないでしょうか。あるいは、自分よりももっと徹底的にやっている人がいるか。
だったらそこより徹底してやればいいし、もしやれないのであればやめればいい。商売っていうのは、突き詰めれば、そういういたってシンプルな仕組みなんだろうなと思います。
オンデーズの最大の武器は、商品の安さやサービスの質ではなく、田中修治という人間だと思う。すべてを守ろうとする一方で、すべてを爆破させてしまうのではないか。
そう思わせる彼の横顔が、やけに印象的だった。
こんにちは。
むぎです。
基本は、お客さんの事を第一に考えた商売という事でしょうか。
のほほんです。