今回はピエール瀧さんの薬物使用による報道をきっかけに、薬物乱用とテレビ報道について考えたいと思います。

 

Q:ピエール瀧さんの一連の報道について、二人の指摘からみえる報道の問題点と報道のあり方とは。

Q:依存症とは何か。

Q:依存症にはまってしまう理由とは。

Q:薬物依存が人体にもたらす影響ってどんなものがあるのか。

Q:テレビ報道の背景とどう扱っていくか。

 

まずは「せやろがいおじさん」と「荻上チキさん」の指摘について紹介します。大体同じことを言っていますが、詳しいのは荻上チキさん。見やすいのは、せやろがいおじさんの動画です(1.5倍速で見れば主張は2分弱で終わります)。せやろがいおじさんは他の動画でもコンパクトにまとまっていて一見の価値ありです。せやろがいおじさんはまた別の記事で詳しく紹介しようと思っています。

 

ギャンブル依存症とじゃんけんのお話とか興味深いですね。

 

こっちも是非

 

 

まとめると問題点として以下の2点を挙げている。1つ目は、

白い粉や注射器などのイメージカットを使った報道を「避けるべき」としている。

心に痛みを抱えた子どもは危険なものにひかれやすく、また、現在は薬物を断って回復の最中にある人がイメージを見ることで欲求が刺激され、再発のきっかけとなってしまう可能性があるためだ。(荻上チキさん)

ほとんどの報道でお決まりのように、イメージ映像を流していましたし、実際の使い方などを流しているテレビ局もありましたね。荻上チキさんの記事に自殺についての報道のあり方も話題に載っていますが、『自殺予防 メディア関係者のための手引き 2008年改訂版日本語版』の中に以下のような文章があります。

(模倣自殺の件数は)報道開始から最初の 3 日間にピークがあり、約 2 週間で横ばいとなり、時に長く遷延するということである。それは、情報の量と影響力に関連し、特に、報道の繰り返しによる多量の情報と、強い露出度と最も強く相関する。それは、報道された人物とそれを読むユーザ ーに何らかの共通点があると、より強調されることになる。若者、うつ病に罹患している人にお いては特にその傾向があらわれる。さらに重要なこととしては、特殊な手段を用いた自殺について詳細に伝えることは、その手段を用いた自殺を増加させるということであろう。

これは自殺のことですが、薬物依存についても同じような影響があるでしょう。視聴者が知りたいことと発信することの影響を鑑みて報道することが必要ですね。

2つ目は、

ガイドラインでは、「がっかりした」「反省してほしい」という関係者や街中のコメントもNG。

薬物使用者は世間では不真面目な人、社会に反抗的な人、というイメージがあるが、おおむねそうではなく、様々なプレッシャーを抱えて薬物の反復使用がやめられない人も多い。

こうしたコメントはピエール瀧容疑者以外の薬物使用者や回復者に対しても、自己嫌悪に追い込み、回復や社会参加の意欲をそいだり、治療の場につながる機会を奪ったりしてしまう。

荻上さんは「フジテレビのバイキング、プライムニュースイブニングはこういうコメントを繰り返し使っていましたし、NHKのニュース7はわざわざ静岡の街の声を流していた。何の報道価値もないばかりか、薬物依存症問題を解決する助けには一切ならない」と警告した。(荻上チキさん)

依存症については以下で詳しく述べますが、がっかりコメントは社会を悪い方向へを動かすことにつながるということですね。これもお決まりのパターンでしたね。

逆に良い方向へと促すこともできます。薬物のない・やめられる世の中にしていくために、例えば荻上チキさんも関わっている団体では薬物報道ガイドラインというものを発信しており、

・(薬物依存症は)逮捕される犯罪という印象だけでなく、医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気であるという事実を伝えること

・相談窓口を紹介し、警察や病院以外の「出口」が複数あることを伝えること

・依存症の危険性、および回復という道を伝えるため、回復した当事者の発言を紹介すること

というようなことを推奨しています。

 

では、そもそも依存症とは、ということを考えていきましょう。荻上チキさんのかかわっている団体「特定非営利活動法人アスク」では依存症について

今、日本の医療・援助・自助の分野で「依存」「依存症」というとき、それはおよそ、次のような意味です。

「何かの習慣的な行動が、自分の生活や人生にダメージを与えているのに、意志の力ではそれがやめられない状態のこと」

(中略)

依存の種類が違っても、本質には共通する点があります。

ストレス・心の痛み・むなしさや寂しさなどを、酔いや高揚感によって「自己治療」するという側面があること。
それが習慣化するうちに、依存が進行し、自分でもコントロールが効かなくなり、逆に自分を傷つけるものになっていきます。
意志の力ではやめられないだけでなく、むしろ「こんなことではダメだ」「やめられない自分は情けない」と自分を責める気持ちが、さらに依存へと駆り立てることが多いのです。

もっとも大切な点は、治療や援助、そして仲間との支え合いによって、回復と社会復帰が可能だということです。参照

そして、薬物依存に、はまった理由として

ストレス対処

  • 気分がよくなる。ストレス発散。(42歳・男性・ドラッグ)
  • 睡眠改善のため精神科へ行き、睡眠薬と精神安定剤を飲むようになった。精神安定剤はぼーっとして気持ちよく、仕事のストレスを感じずに働くことができたし、肩こりもとれた。先生に「よかったので、今後もお願いします」と伝え、常用するようになった。(44歳・男性・処方薬)

リラックス・気分転換

  • 母親が依存症で、物心つく頃から周りに薬物があったので、それが当たり前の気分転換で、あまり悪いとも思わなかった。(34歳・男性・ドラッグ)
  • アルコール依存症で入院し、処方されたのがきっかけ。退院後も処方され、飲まずにいたら、少しずつ薬がたまっていった。ある時、処方薬でも緊張を解いて気持ちを安定させられることがわかり、だんだん増えていった(43歳・女性・処方薬)

快感

  • SEXが気持ちいいから。(28歳・男性・ドラッグ)
  • お酒と合わせると、より酔えるし、訳がわからなくなって気持ちいいから。(28歳・男性・処方薬)

つながり・居場所

  • みんながやっていたので、のけ者になりたくなかった。(53歳・男性・ドラッグ)
  • 10代の中ごろ、アルコールや違法薬物を使う友人の中に自分の居場所を見つけた気がした。使い続ける中で、一人で使って一人の世界に閉じこもることが好きになってしまった。(42歳・男性・ドラッグ)

コンプレックス解消・自信

  • コンプレックスがあった。友人からバカにされ、傷ついたが笑ってごまかして生活していた。(32歳・男性・ドラッグ)

現実逃避

  • 親からの期待に添えないことや、望みを叶えられない生活から目をそらすため、薬を使っていました。薬を使えばすべて忘れ、薬さえあれば何もいらない。親や友人も必要ないと思うことができた。(40歳・男性・ドラッグ)
  • 寝ている間は何も考えずにいられるから。(29歳・男性・処方薬)

苦しさや不眠への対処

  • うつ病の症状がひどくて、とてもつらいときに、大麻を使ったら身も心も軽くなり、楽になったから。(36歳・男性・ドラッグ)
  • PTSDのフラッシュバックがひどい頃、処方薬のまとめ飲みをして意識を失うことで持ちこたえていた。死ぬのはいけないから、ワープしていた。(32歳・女性・処方薬)

どれも当てはまらない人なんているんでしょうか。私だって今ここにいれるのは運が良かっただけかもしれません。

 

実際に薬物を使うと以下のような影響が起きます。

【抑制】脳の中枢神経の働きをマヒさせる。
そのことによって理性のコントロールがはずれてリラックスしたり、多幸感が得られるなど、「酔った」状態になる。
催眠(眠くなる)作用をともなうものも多い。
抑制系の薬物はダウナーとも呼ばれる。
【興奮】文字通り、脳の中枢神経を興奮させる。
いわゆる「ハイになった」状態。
興奮系の薬物はアッパーとも呼ばれる。
【幻覚】幻視・幻聴など、幻覚をもたらす。

 

覚せい剤や大麻などの違法薬物だけでなく、アルコール、たばこ(ニコチン)のように一般には嗜好品とされるものや、睡眠薬・抗不安薬のような処方薬、せきどめ薬など市販薬も、依存性のある薬物に含まれます。

※1 急性精神毒性:薬物の使用時や使用直後に現われる、精神作用への悪影響
※2 慢性精神毒性:継続的な薬物使用によって現われる、精神作用への慢性的な悪影響
※3 合成薬物の作用は、薬物ごとにまったく異なる。
https://www.ask.or.jp/article/薬物乱用・依存/薬物乱用・依存を知ろう/薬物(ドラッグ)って何?

 

そしてそれだけにとどまりません。麻薬・覚せい剤乱用防止センターによると

 薬物乱用がもたらす影響は個人にとどまらず、周囲の人や社会全体に害をもたらします。 

 薬物乱用は個人の問題だから、別にかまわないのでは...という人がいますが、 それはおろかな考えというしかありません。薬物乱用ほど、周囲に深刻な影響を与えるものはほかにないからです。 

 代表的なひとつが暴力です。長い間、薬物を乱用していると、知覚障害・食欲減退・情緒障害、幻覚や被害妄想が強くなり、家族に乱暴したり、常に凶器をもち歩くなどの異常行動がめだつようになります。家族や周囲の人たちはそれらにふりまわされ、恐怖と苦痛の毎日を強いられることになります。

(中略)

 薬物乱用による影響は広い範囲にわたり、さまざまな角度から市民生活をおびやかしています。

たばこやお酒も依存性があるのになんでドラッグ使用だけ犯罪なのかということが調べる前は疑問でしたが、ドラックは使い続けていくことによって他者に危害が被ることが想定されるため、犯罪になんだなあということが私の答えです。

 

このように調べていくと、薬物乱用で捕まった人というのは、犯罪者(語弊があるかもしれませんがまだ人に迷惑をかけていないので準犯罪者?)ということと依存症患者という2つの側面をもっているということがいえます。前提として、麻薬は絶対やってはいけないし犯罪です。

ですが、

悪いことをしたんだから罪を償え!っていう反面で社会復帰するためにはどんなことができるのだろうか。薬物のない良い社会にしているために自分にできることはなんだろうかということを考え行くことが大切だと思います。

ここまで読んでいる人は大丈夫だと思うのですが、今、テレビでは良いか悪いかの二元論的考え方で判断して「はい、一件落着」という考えがはびこっている気がしてとても怖いです。せやろがいおじさんも言っていましたが「何かバッシングされたら人生ゲームオーバー」という考えに自分もなっちゃだめだし、周りにもそういう考えにならせちゃだめだと思います。

メディアがいろんな事件で他面的に見ずに悪いと決めつけたり、必要以上にラベリングを張ったりするのを、我々知的生命体は必要以上に気をつけて受け取る必要があると思います。

 

最後に、せやろがいおじさんが動画で言っていた「依存症を視聴率を上げる道具にしてはならない」ということですが、この背景には、いろいろなネットによる情報源が増えて視聴する母数が減っている中で、視聴率を上げようとして報道が過熱する傾向にあるのかなと思います。週刊誌とテレビは僕は違うと思っていましたが、最近は収入源が若干異なるだけで同じ分類として扱っても差し支えないのかなと思います。

 

今後の課題:せやろがいおじさんについて紹介

 

編集後記:今回から1つの記事についてじっくりと考えて書きました。なぜ変えたかというと、これまでの投稿は、1日1記事書いているという自己満足以上のものが感じられなかったこと。娘が最近生まれたのですが、娘が将来見ても学べるようにするために1つ1つの記事を大切にすることを意識したかったからです。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。またお願いします。