味方
この頃の私は自分の事で精一杯だったので気が付かなかったのですが、私の仕事を見ていた職人達は、P.S.さんと話をする度に、
「奴にあまりうるさい事を言うなよ、せっかく若いのが入ってきたのに、あんまり追い詰めると又辞めちまうぞ! 奴は良くやってるじゃないか。 あいつがいられないんだったら、若い奴は誰もお前の所にいられないぞ。」
と忠告していたそうです。 奥さんの話を聞いても、私が入った頃から「きつさ」が徐々になくなってきたそうです。 年齢的なこともあるようですが、P.S.さんの仕事に惚れて近付いてきた人達が、結局は皆離れてしまった事を寂しく思っていた部分もあるような気がしました。 昔気質の頑固職人の中でも「人付き合いが下手」な部類に入る人だと思います。 これまでは人に何を言われても決して聞き入れるような人ではなかったのですが、あまりにも周りが異口同音に言うので、自分なりに小言を我慢していたようです。
奥さんも随分味方になってくれていたようです。 私がいないところで、P.S.さんには何度も、
「あんなきつい言い方をしなくてもいいんじゃない!」
「少しは認めてあげなさいよ! 今までだって、入ってきた人みんな辞めちゃったじゃない。」
と事ある毎に言っていたそうです。 自分では何か一言でも言われれば慌てて飛んでゆく、昔の「丁稚奉公」のつもりでいました。 給料が出る分、「丁稚奉公」より何倍も恵まれているのだから、そんなことは当然と思っていましたが、周りの認識は既にそんな時代ではなかったようです。
奥さん以上に味方してくれたのがP.S.さんの娘でした。 気の強さは母親譲りでしたが、とてもかわいい子でした。 残念な事に彼氏がいて、たまに家に連れてきていましたが、P.S.さんは面白くありませんでした。 彼が来ると「百年目の敵」を見詰める復讐鬼のような形相で睨み付けていましたし、全く口も利きませんでした。 たまに無茶な仕事をやらされ、1人でてんてこ舞いしていると、
「お父さん、○○さん(私の事)1人にあんな大変な事させて、自分は暢気にテレビなんか見ちゃって、少しは手伝ってあげなさいよ!」
と、何度も言ってくれたようです。 奥さんに何か言われると、
「うるさい! お前は黙ってろ! 職人の世界がお前に分かる訳ないだろう!」
と怒鳴り返して全く相手にしないのですが、娘に言われると、
「それもそうだな。」
と言って、言う通りにしてたそうです。
ただ、こうして周りの人達が私の事をとても気にかけてくれて、私の知らないところでP.S.さんにあれこれと言ってくれていた事を知ったのは随分後になってからでした。 それに、いくら仕事がきつかろうとも、自宅では決して覚えられない仕事が覚えられるという大きな見返りがあるのですし、月単位では自分の成長を確認できなくても、半年前を振り返れば、確実に成長している自分を確認できます。 今は焦らず、確実に自分を成長させる事が大事だ、今は「堪える」時期だと自分に言い聞かせていましたから、周りが見ているほど苦痛とは感じていませんでした。
「奴にあまりうるさい事を言うなよ、せっかく若いのが入ってきたのに、あんまり追い詰めると又辞めちまうぞ! 奴は良くやってるじゃないか。 あいつがいられないんだったら、若い奴は誰もお前の所にいられないぞ。」
と忠告していたそうです。 奥さんの話を聞いても、私が入った頃から「きつさ」が徐々になくなってきたそうです。 年齢的なこともあるようですが、P.S.さんの仕事に惚れて近付いてきた人達が、結局は皆離れてしまった事を寂しく思っていた部分もあるような気がしました。 昔気質の頑固職人の中でも「人付き合いが下手」な部類に入る人だと思います。 これまでは人に何を言われても決して聞き入れるような人ではなかったのですが、あまりにも周りが異口同音に言うので、自分なりに小言を我慢していたようです。
奥さんも随分味方になってくれていたようです。 私がいないところで、P.S.さんには何度も、
「あんなきつい言い方をしなくてもいいんじゃない!」
「少しは認めてあげなさいよ! 今までだって、入ってきた人みんな辞めちゃったじゃない。」
と事ある毎に言っていたそうです。 自分では何か一言でも言われれば慌てて飛んでゆく、昔の「丁稚奉公」のつもりでいました。 給料が出る分、「丁稚奉公」より何倍も恵まれているのだから、そんなことは当然と思っていましたが、周りの認識は既にそんな時代ではなかったようです。
奥さん以上に味方してくれたのがP.S.さんの娘でした。 気の強さは母親譲りでしたが、とてもかわいい子でした。 残念な事に彼氏がいて、たまに家に連れてきていましたが、P.S.さんは面白くありませんでした。 彼が来ると「百年目の敵」を見詰める復讐鬼のような形相で睨み付けていましたし、全く口も利きませんでした。 たまに無茶な仕事をやらされ、1人でてんてこ舞いしていると、
「お父さん、○○さん(私の事)1人にあんな大変な事させて、自分は暢気にテレビなんか見ちゃって、少しは手伝ってあげなさいよ!」
と、何度も言ってくれたようです。 奥さんに何か言われると、
「うるさい! お前は黙ってろ! 職人の世界がお前に分かる訳ないだろう!」
と怒鳴り返して全く相手にしないのですが、娘に言われると、
「それもそうだな。」
と言って、言う通りにしてたそうです。
ただ、こうして周りの人達が私の事をとても気にかけてくれて、私の知らないところでP.S.さんにあれこれと言ってくれていた事を知ったのは随分後になってからでした。 それに、いくら仕事がきつかろうとも、自宅では決して覚えられない仕事が覚えられるという大きな見返りがあるのですし、月単位では自分の成長を確認できなくても、半年前を振り返れば、確実に成長している自分を確認できます。 今は焦らず、確実に自分を成長させる事が大事だ、今は「堪える」時期だと自分に言い聞かせていましたから、周りが見ているほど苦痛とは感じていませんでした。