それに気づいたのはまさに奇跡と言ってもいいかもしれない、あんな死に方では気付ける人もわずかだと思う。

俺が確認したのは急速に膨張する夕日を浴びて地面に映る影だった

 不審に思った俺はばねのように頭を跳ね上げさせると、上空から落下してくる物体が目に付いた。

鉄骨

当然そんなものが落下してくれば人なんてひとたまりもない、マシュマロが落ちてくるのとはわけが違う。

 俺は突然のことに思わずまぶたをしっかと閉じてしまう。

 死んだ。

 そう感じたはずだった。

 けれどもいくら待っても落下してきた鉄骨の衝撃は訪れない。

 それに替わり聞こえた、どこか不快な高音と呟き声に気付き、俺はゆっくりとまぶたを開く。

「ふう、間に合ったあ…あぁ、ゲートにお腹がつっかえるなんて…かっこわるぅ…あとでサラちゃんに笑われそう…」

 そんなセリフが、舞い上がる土ぼこりの向こう側から聞こえた。

 俺はただ呆然と目を見開く、突然襲った死の恐怖に足が砕け座り込んでしまっていた。

 そんな俺の目と鼻の先にはダークスーツに身を包んだ女性の体がある。

 正確には体勢からして風に揺れるスカートの端しか見えないこれはこれで扇情的だけれども無論そんなことより鉄骨の行方を目が追おうと動く。

 しかし確認できたのは夕焼けに染まる町に突如現れたその女だけだった

「天使…なのか?」

 傷ひとつない体を見渡して俺は思わず呟いてしまう。

「あぁーごめんなさい…そのお…」

 子細に観察してすぐに申し訳なさそうに眉をひそめる女性の異常に気がついた。

 もちろんこんな前後に見晴らしのいい障害物のない一本道でどうして俺に気取られずにここまで接近できたのだろう?というのもある。

 しかしそれとは別物の違和感だ。

 ダークスーツとネクタイを完備し少し大きめのバストも特に異常というほどもない

 これはよし

 長く肘の辺りまで伸ばした黒くきらめく髪もまあ現実ありえないことじゃあないけれど…

「あ、申し遅れました。私、第四階級悪魔をやっています、アレイシア=ダークスといいます。」

 こめかみの辺りから伸びる黒羊角とコウモリのような翼、特徴的な銛状の尻尾を備えたそのひとは

  悪魔だった。