短い別れのスケッチ | どうして おなかが すくのかな 企画


父が還暦を迎えた。
空に星が増えては消えていき
野山の息吹を感じながら何度も季節を迎えたことでしょう。

一緒に寿司を食べながら、父の友人の話を語ってくれた
父には幼馴染の友がおり、
もう30年ぐらい前に亡くなった
ぼくもそのおじさんのことはかすかに覚えている
僕は、そのおじさんのことを思い出すと
なぜか「岬めぐり」を口ずさんでしまう

岬めぐりのバスは走る
僕はどうして生きてゆこう
悲しみ深く胸に沈めたら
この旅終えて街に帰ろう

その友の奥さんから父への手紙が届いた
御仏の国からだそうだ。
父も今日という特別な日に、お線香をと出かけていった
お仏壇の前でボロボロ泣いてしまったそう
ぼくはその話を聞きながら
感極まってしまい、その僕の姿を
隠すことばかり考えてしまったよ。

僕の友も亡くなった。
最後に見た病室での彼の笑顔は忘れることができない。
最後に言ってくれた言葉は
「ぼくはもう居なくなってしまうけど
君は君の道を進むべきだ。ぼくには君が
自分の信じた道でも失敗や挫折、たくさんのことが
待ち構えているかもしれない、けどね
ぼくには君の幸せそうな顔がいつでも浮かぶよ」

父と友、僕と友。
違う時代に生まれても、悲しい別れを思い出しながら
ここに立っているんだな。
ぼくが知らないところで
みなさんもたくさんの思い出があり、
ぼくより辛い別れもあるんだな
いろいろ考えるのです。

父の会社の方々が還暦のお祝いをしていただけるみたい
父は恥ずかしそうに
「おれも、みんながお祝いしてくれると言ってくれるが
少しお金持っていかなきゃな」と

それは、ぼくに出せってことなのか・・・・
まぁ、お祝いだから。少しだけでも親孝行のつもりで。

短い別れのスケッチが、父にも僕にも。


~寺山 修司 風(笑)~