昨年末に豊洲PITで行われたAppare!のワンマンライブは、コロナ禍によって空洞化したアイドルシーンに、ようやく一筋の光明を見い出したという点において大変意味のあるものだった。
感染予防の規制が緩和されたことによって、コールはもちろん、ジャンプ、サークル、振りコピ、横移動で沸く会場。まるで平成のアイドル現場にタイムスリップしたかのようなフロアの熱気に、観客の多くは、久しぶりにアイドルのライブに来ているのだということを実感したに違いない。
観客の熱量に共振するかのように、ステージ上のメンバーからも、コロナ禍によって失われたこの3年間を、闇に葬り去るようなエネルギーが発せられ、自分の好みからすると、この日のライブは数ヶ月前に行われた日比谷野音のライブよりもずっと楽しかった。
「これは来年もAppare!には楽しませてもらえそうだな。」
そんな余韻にひたりながら、私は帰路についた。
というわけで今年最初のAppare!現場。4月に発売される新曲のリリースイベントで、会場は渋谷のO-WESTである。
なぜ4ヶ月も先にリリースされる、タイトルすら決まっていない新曲のイベントが、年明け早々から行われるのかよくわからないが、ようするにこれはリリースイベントとは名ばかりのフリーライブではないか。ただ近頃は、アイドルのリリースイベントそのものが激減し、そんな中、今でもコンスタントにCDを発売し、毎回リリイベを行うAppare!のようなグループは、それだけでも希少価値があるように思えてしまう。
1部2部とも新旧の代表曲をうまく取り混ぜたまるで新春大売り出しのようなセトリ。豊洲のときのように声出しが解禁されなかったのが残念だったが、それでも十分に楽しめる内容だった。
この日、1部2部ともに歌われた唯一の楽曲が「ぱぴぷぺPOP!」である。TikTokでバズり、一瞬にしてAppare!の代表曲になった感もあるこの曲だが、世間の評価同様に今回のライブでも、さぞかし盛り上がったのかというと、決してそんなことはなかったように思う。
単純に盛り上がったという意味だけでいえばお馴染みの「アイネクライネ幼き恋だね」や「スカイラインファンファーレ!」のほうが、よっぽど盛り上がっていた。これがアイドルというジャンルの面白いところというか、奥の深いところである。
うまく説明出来ないが、「ぱぴぷぺPOP!」には、いかにも「狙っている」というあざとさが透けて見える。その「狙い」はTikTokでバズったという意味においては目的が達成されたともいえるが、MVを観てもCDを聴いても、この曲の歌詞とダンスには、どこか興醒めするような気恥ずかしさがついて回り、それはライブで観ても印象は同じだった。「ぱぴぷぺPOP!」に対する意外なほど醒めた反応は、自分と同じような考えのオタクも、結構多かったのではないだろうか。
とは言ったものの、この曲で彼女達を知った不特定多数の人間を、少しでもライブ会場に呼び込まなくてはAppare!に未来はないわけで、今まさに千載一遇のチャンスである。ライブ中のお約束のMCで、この日初めてAppare!を観にきた人を挙手させていたが、自分の感覚だとまだまだ少ないように感じた。しかしリリースイベントはまだ開幕したばかり。「ぱぴぷぺPOP!」効果で、この先たくさんの新規客が会場を埋めつくしてくれることを切に願いたい。