今回、5年ぶりの開催となったアップアップガールズ(仮)の日比谷野外音楽堂でのライブは、何から何まで異例ずくしのことだった。

まず夏も終わりかけている9月になってから突然、開催が発表されたこと。公式発表から本番までの期間がわずか25日しかないというのは、野音のキャパを考えたらちょっとあり得ないことだ。

おそらく早い時期から会場を抑えていたが、コロナ渦の中で、ライブが開催出来るかどうか状況が危ぶまれていた。そこでギリギリのタイミングで決行に踏み切ったということではないだろうか。

そしてこの野音のライブをもって「現体制での活動を終了し新体制に移行する」のだという。明らかにこれは現在の5人のメンバーでの活動が終了することを示唆している。それがメンバーの卒業なのか、あるいはアプガ(2)を含めたグループ内での再編成を意味するものなのか、ヲタク内でもいろんな憶測が飛び交ったが、おそらく野音のステージ上でメンバーの口から重大な言葉が発せられることは間違いないだろう。

霞ヶ関駅の地下道から地上に出ると、この時期にしては外は肌寒く小雨が降っていた。

日比谷野音の前に到着すると、フェイスシールドを装着した係員が間隔を空けて並んで下さいと声を枯らしている。入場時には身分証明書の提示と質問票の提出、さらには手指の消毒と何やら物々しく、客席は新型コロナウィルス感染防止のため、前後左右の座席が空いている。

極めつけはライブ中はマスクの着用が義務づけられ、声を発することは禁止だという。異例というより異常といったほうがいいような事態だが、今後もしばらくはこういう状況が続いていくのだろう。何だか暗澹とした気分になってくる。

オープニグアクトの一番手に登場したのはアップアップガールズ(プロレス)の3人。自分が知らない曲を歌っていたので、おそらく最近の曲なのだろう。会場内のユルい雰囲気がいかにも前座を観ているという感じがする。

ステージ上には続いてアップアップガールズ(2)が登場する。

(2)を観るのも結構久しぶりで、記憶が正しければ今年の初めに観たクマニキのリリイベ以来ということになる。

1曲目のイントロが鳴り、思わず立ち上がる…が、前述したように、このような状況では盛り上がりようがなく、なかなかフラストレーションがたまるライブだ。

アプガ(2)のライブが終わり、しばらくすると「BORN SLIPPY NUXX」の音が聴こえてきて、それがやがて「OVERTURE」に変わる。

空はすっかり暗くなり、煌々と照らされたステージ上に現れたアプガ(仮)のメンバーを観たとき、今までに感じたことのないような懐かしさを感じた。

今年になってアプガ(仮)を観たのは2月に吉祥寺で行われたAKNFESだけで、それ以降は一度も観ていない。つまり7ヶ月ぶりに彼女達のライブを観たわけだが、こんなにインターバルが空いたのは今回が初めてのことだった。

たったの7ヶ月と思うかもしれないが、ヲタクにとっての7ヶ月の空白というのはほとんど永遠ともいえるような長さであり、懐かしさを感じるには十分すぎる時間だったと思う。

エンドレスサマーと銘打たれた今回のライブは、その名のとおり「終わらない夏」をテーマにしたもので、魚やヤシの木のオブジェが置かれたステージで、メンバーがお馴染みの夏曲を中心にパフォーマンスを繰り広げるというとてもわかりやすいものだった。

しかし、ステージ上で繰り広げられるパフォーマンスと、客席の間には信じられないくらいの温度差が生じていたこともまた事実だった。

繰り返すが、客席から声援を送ることは禁止されており、会場内はとても盛り上がっているとはいえない状態。加えて場内は入場規制でスカスカの入り。さらにいえば雨は上がったとはいえ、夜になって気温はいっそう冷え込み、おおよそ真夏の夜の夢という気分ではない。

このような状況で、アプガのメンバーだけがステージ上で「夏」を謳歌している姿はどこか滑稽であり、「エンドレスサマー」という空間を無理矢理作り上げているような不自然さだけが最後までつきまとった。

たらればを言っても仕方ないが、これが以前までのような規制のないライブ環境だったら…あるいはせめて1ヶ月前の暑い時期に行われていたなら…という気分が渦巻く。ライブの内容そのものは悪くなかっただけにとても残念な気分だ。

アンコールで、この日の最大の関心事であった今後の新体制についての説明が行われた。

それはアップアップガールズ(仮)にとって初の新メンバー募集のオーディションという、ある意味とても意表をつくものだった。

応募資格は小学校6年生から28歳までということだが、ハロプロエッグ時代を含めて、ほとんど人生の半分くらい一緒にいるようなメンバーの中に、例えばアイドル1年生みたいな新メンバーが加入することなど現実問題として可能なのだろうか。

アプガ(仮)と同世代の元アイドル加入というのがいちばん現実的な線だと思うが、どちらに転んでも興味深い展開になりそうだ。

結成10周年を前にまだまだ彼女達の物語は続いていく。