サンプラザの前に到着すると、おびただしい数の原色の(仮)Tシャツ軍団が、開演時間を今か今かと待ちわびていた。

今日、ここにいる人たち全員が、アプガのライブを観るためだけに、この場所に集まってきたのだと実感し、一瞬、胸が熱くなる。

思えば、自分が初めてアップアップガールズ(仮)を観た会場も、ここ中野サンプラザだった。

二年前のちょうど今頃、YGAのコンサートにゲストとして招かれた彼女達は、多数のアイドルグループが出演する中、トップバッターとしてステージに登場し、その肉体的ともいえるライブパフォーマンスで観客を圧倒し、アプガ凄し!を印象づけた。

あの日、アプガ目当てにサンプラザを訪れた観客の数は、おそらく、この日の10分の1以下だった思うが、そんな他ヲタが占拠するアウェイな場内で、がむしゃらに観客と格闘する彼女達の姿は、今でもしっかりと脳裏に焼き付いている。

アイドルの聖地=中野サンプラザで、彼女達との運命的な出会いを果たした自分は、その夏のTIF2012をアプガ中心に観てまわり、以降、今日に至るまで、出来る限り、アプガの現場に足を運んできた。

どんなライブ会場であっても、彼女達は常に全力でパフォーマンスを行い、その鍛え上げた肉体と、妥協を許さない強靭な精神力で、観客と対峙してきた。

だから、アップアップガールズ(仮)は、異常なまでに「男性的」なアイドルグループだといえる。

そんな彼女達にとって、グループ結成以来の悲願が、中野サンプラザでワンマンコンサートを行うことだった。

ハロプロエッグ時代に先輩達のバックダンサーとして上がった、中野サンプラザのステージに、アップアップガールズ(仮)として帰還を果たすというストーリーは、この日のコンサートを、より劇的なものへと昇華させた。

ただし、サンプラザのステージだからといって、コンサートの内容そのものに、大きな変化があったわけではない。

いつもと同じように、等身大のアップアップガールズ(仮)の7人が、そこにはいた。

今までのライブとの、大きな違いといえば、アプガのライブ史上初めて、ステージの上にセットらしいものが組まれたことと、照明にレーザー光線が使用されたことだろうか。

悲願のサンプラザ公演が成就したことよりも、ライブの演出にようやく人並みに、カネをかけてもらえるようになったことに涙が出てくるww

事実、彼女達はグループ結成から今日まで、お金を使って売りに出されたようなことは一度もなく、アップフロントの末端に身を置きながら、常にギリギリの状況の中で、アイドル活動を行ってきた。

音楽番組に出演出来るわけでも、雑誌のグラビアを飾れるわけでもない彼女達が、アイドルとして生き延びていく手段、それは自らの身体を虐め、ひたすらライブに打ち込んでいく以外になかった。

日本全国のライブハウス、各都市のインストアイベント、さらにロックフェスの会場から、プロレスのリングの上まで、来る日も来る日もライブを重ねていき、彼女達にとっての「ライブ」とは、単に歌や踊りを披露する場ではなく、自分達の存在理由を証明する場所でもあった。

サンプラザに集まった満員の観客は、もちろんアプガのファンであるが、もっと正確にいうと、それは「アプガのライブ」のファンだともいえる。

個別握手会やチェキもないのに、よくアプガのヲタなんてやってられるよな、という意見を聞くことがあるが、接触商法に侵され、もはや風俗産業と大差のなくなった、現在のアイドルシーンにおいて「単なる握手会」であるアプガの接触に、物足りなさを感じる人がいても不思議ではない。

しかし、アプガヲタの嗜好というのは、あくまでもライブが最優先事項であり、握手だの、認知だの、接触だのといったことに、必死になる接触厨は少ない。(もちろん、中には例外の人もいるだろうけど)

アップアップガールズ(仮)は、ライブの動員数とCDの売上げ枚数に、もっとも乖離のないアイドルグループだと言われており、実際に彼女達のシングルというのは、せいぜい3000~4000枚くらいしか売れていない。ハッキリ言って、これは地下アイドル並か、それ以下の数字である。しかし、一方では今回のように、中野サンプラザをソールドアウトにするだけの動員力があり、これは彼女達が接触による水増し売上げに頼らずに、ライブで多くの観客を獲得してきたことの証左だといえる。

場内のボルテージが、ピークに達したのは、途中、メンバーが通路に下りてきて、観客席の後方まで参上したときだった。

AKB襲撃事件の余波が残る中、ある意味、空気を読まない怖いもの知らずなパフォーマンスだと思ったが、もちろん観客は紳士的に対応し、彼女達を盛り上げていく。その光景は、今までのライブで築き上げた信頼関係を映し出しているようにも見えた。

そしてコンサートは、やがて訪れる「爆発炎上」に向けて、加速化していく。

「ジャンパー!」「ENJOY ENJO(Y)!!」「アップアップタイフーン」「チョッパー☆チョッパー」といった曲は、その爆発炎上に向けての導火線のようなものであり、最終的にそれは「アッパーカット」という火薬庫に引火し、大爆発を引き起こす。

もう、この頃になると、メンバーも観客もヘトヘトになり、何かステージ上には「アッパーカット」の残り火が、焼け跡の上でめらめらと燃えているようにも見える。そして、この疲労感と巨大なカタルシスがアプガのライブの醍醐味なのだろう。

コンサートの終盤、11月に今度はZepp DiverCityでワンマンコンサートが行われることが発表された。

キャパは、さらに大きくなるが、今度はアプガのお家芸である、オールスタンディングのライブだし、これは期待できそうだ。

またアプガvsロックバンドだとか、富士山の山頂でライブ?とかいう謎の告知もされていたが、いったい何が行われるのだろうか。

何にしてもアプガの暑い夏は、もうすぐ開幕する。そして、いま気分は最高に高揚している。