今回の公演からパンフレットが販売され、その中にはCHANCEの舞台演出を担当している中村龍史氏のどこか皮肉めいた挨拶文が掲載されている。
「アイドルといえばティーンエイジャー…!?
きっかけになったのは、そんな今の日本の風潮に対する疑問です。
かわいいだけでアイドルと呼ばれて、実際はちゃんと歌えないし、踊れない。芝居なんてもってのほか。
で、僕は思ったんです。
本当に実力のある、そして女性としての魅力も全開のアイドルチームをつくりたい、と。…」
中村氏の、この文章の中からは「アイドルは果たして今のままでいいのか!?」という巷に存在するアイドルの姿勢を鋭く指摘したような挑発的な視点が読み取れる。
「ライブ」とは名ばかりの口パクが横行し、素人に毛が生えた程度のダンスの技量を客の前で披露する今のアイドルたち…。
そして、そんなアイドル達を提供する運営側は一部の客の財布(財力)にだけ依存し同じタイトルのCDやらDVDやらを複数買わせることによって日銭を得る…。
こういったシーンを蝕んできた悪性ガンの進行をストップさせる、すなわち現在のアイドルシーンの在り方に警鐘を鳴らすことが必要だとの考えは誰しもが持っていた。
そんな時、かつて90年代に東京パフォーマンスドールを世に送り出し、それまでのアイドルの既成概念を一変させてしまった中村龍史氏が今度はCHANCEというグループを引っ提げて再びアイドルシーンに登場してきた意味は非常に大きいと思う。
この日、ステージに上がったメンバー、それは言い替えれば中村作品の一部であり分身でもある。
今回で5回目をむかえたCHANCEのライブパフォーマンスだが、その圧倒的な表現力と歌唱力、そしてダンスの技術を含めた運動能力は回数を重ねるごとに進化し、これぞ中村イズムと呼べる内容だった。
前半は「工場現場の休憩中」という設定のいつもの歌劇にクリスマス風なネタをブレンドさせたもの。
終演後に本人から直接、はなしを聞いたのだが、このときの音楽を担当していたのは元東京パフォーマンスドールの大藤史さん(思わず「さん」をつけてしまうところが大藤史という人だなwww)だとか。
実は大藤さんと、きちんと話をしたのはこの日が初めてのことだったが、見た目どおりの物腰の柔らかい素敵な女性で、彼女も今は既婚者であり趣味で音楽を続けているらしい。
あれから20年の歳月が経過したけど今でも元TPDのメンバーが携わる仕事にこうして観客の立場で触れることが出来るというのは実にファン冥利につきる。
「当時、ルイードでピンク色の衣装を着て「HISTORY」を歌ったの覚えていますよ」 とオレが言ったら笑っていたけれどパフォーマンスドールのファンていうのはメンバー以上に当時のことをはっきり覚えているからwww
ステージに話を戻すが前半の芝居がかった演目からうってかわり、後半の凄みに満ちた歌と踊りの圧倒的なパフォーマンスはどうだろう。
あれだけハードなダンスをこなしながら、まったくブレることのない歌声。
とくにエンディングの「MAGIC NIGHT」…この曲を観るたびに聴くたびに、かつてのTPDの「CAN'T STOP THE MUSIC」やSPDの「GO WEST」をライブで観ているときと同様の化学反応が自分の体内に起こる。
そして今、オレはこんなことを考えている。
こういう感慨に浸りたくて自分は今もアイドル現場にいるのだろうと…。
彼女達の登場は、今の歌えない、踊れないアイドル達がいつしか淘汰され、やがて「本物の時代」が到来することを期待させる。