オルフィーヴルの凱旋門賞は残念でした。
応援していたのですが、勝った馬がとんでもなく強過ぎました。
上には上が居るってことなんですね~。
今の私は酒もタバコもギャンブルも一切やりません。
そんな私ですが少しだけ競馬にはまっていた時期がありました。
20年ほど前になります。
同僚に無理やり連れて行かれた競馬場、そこでビワハヤヒデと出合いました。

競馬のことなんて何も知らない私。
初めて見たパドック、どの馬も筋肉モリモリで大きくて立派、毛並みが良くてピカピカ光っていました。
その中で優しい目をした葦毛(白馬)のビワハヤヒデがいました。

葦毛で斑模様の彼は素人の私にはどうにも弱そうに見えたのです。
ところが実際のレースになると、弱そうな葦毛馬がダントツの強さでターフを駆け抜けました。
なんだか私凄く感動してしまいまして、それ以来ビワハヤヒデのファンになりました。
岡部幸雄騎手とビワハヤヒデのコンビは、その後も2着以下は無い堅実で強いレースを重ね、無敵と呼ばれるようになりました。
馬券は大して買いませんでしたが、ファンとしてレースは常に見ていました。
自分が発見した馬のような気がして、いつもワクワクしながら応援していました。
そのビワハヤヒデには弟が居ました。
後の三冠馬ナリタブライアンです。

シャドーロールがトレードマークの美しい馬でした。
ビワハヤヒデとナリタブライアンは同じ母、パシフィカスから生まれました。
競馬では母が同じ馬だけを兄弟と言います。
ビワハヤヒデの父はシャルード、ナリタブライアンの父はブライアンズタイムです。
そして、このナリタブライアンが凄かった!!
一度エンジンがかかると唸るような加速をして他の馬を引き離していきます。
その強さは圧倒的。
走る度に着差が広がる。
全盛期には何着に来るか、ではなく、何馬身引き離して勝つか、が注目されるほど。
私はナリタブライアンの大ファンになりました。
私ね、子供の頃から圧倒的に強いものが好きなんです。
ヒーローなんかでも、弱点があって人情味あふれるようなやつは嫌いでした。
とにかく圧倒的に強くて、他を寄せ付けないやつが大好きなんです。
ナリタブライアンはまさにそんな馬でした。
特に4歳時の強さは感動的でした。
当時、ビワハヤヒデ、ナリタブライアンの兄弟対決を熱望していましたが、その願いは実現せずに両馬とも引退してしまいました。
古馬になってからのナリタブライアンはいろいろあり、有終の美を飾るような引退はできませんでした。
本来中長距離路線で活躍していたナリタブライアン、なぜだか1200mmのG1高松宮杯に出走。
それでも今までの実績から2番人気に推されました。
不調とはいえ、最強馬ナリタブライアンならなんとかしてくれるのでは、かなりの期待をしながらレースを観戦したのを覚えています。
結果は4着。
それでも中長距離路線からいきなりの短距離参戦です。
十分健闘したと思います。
負けはしましたが、やはりナリタブライアンは強い、と思いました。
ビワハヤヒデ、ナリタブライアン兄弟のおかげですっかり競馬ファンになった私。
その後も期待できそうな馬を見つけては追いかけていました。
その中の一頭にサイレンススズカがいました。
デビュー戦から数戦は勝ち負けがはっきりした馬でした。
ムラがあるって言うやつです。

しかし、サイレンススズカは着実に強くなっていきました。
想像を絶するスピード馬へと変貌を遂げて行きます。
ビワハヤヒデのように好位置から抜けだすでもなく。
ナリタブライアンのように後方から一気にまくるのでもない。
先行ぶっちぎり、最初から最後まで先頭で、更にはゴールまで圧倒的なスピードで差を広げていく。
自分でレースを作り、自分のペースで走り、最後の最後まで加速し続ける。
完全無欠の最強馬へと成長しました。
私はスズカに夢中になり、東京競馬場でのレースは必ず応援に行きました。
そして、1998年11月1日、運命の天皇賞。
このときの最強馬サイレンススズカは勝って当然、、何馬身引き離して勝つか、が注目されるレースとなっていました。
スズカの雄姿を少しでも近くで見ようと最終コーナーの芝生最前列に陣取った私。
予想通りスズカはぶっちぎりの先頭で最終コーナーに入ってきました。
このままで行けば後続に何馬身差をつけるんだろう?
あまりにも圧倒的なスピードに胸が高鳴ったことをよく覚えています。
そのときです。
スズカがバランスを崩し ガクッ となりました。
そしてスズカは足を引きづりならがら直線入り口の大外で止まったのです。
武騎手がスズカから降りるのが見えました。
目の前が真っ暗になりました。
どこか故障したことに間違いはありません。
このレースは諦めるとしても、せめて軽い故障で済んでくれ、心から祈りました。
本当にスズカを見ながら手を合わせて祈りました。
しかし、その日、サイレンススズカは永遠の眠りについたのです。
それ以来、競馬場には一度も行っていません。
あんなに悲しい思いは二度としたくないからです。
今では競馬のことも、もちろん馬のことも全く解りません。
ところがニュースでオルフィーブルの2年連続凱旋門賞挑戦を知りました。
ちょっと興味が湧いてオルフィーブルのことを調べました。
父はステイゴールド。
かつでスズカとステイゴールドは同じターフを駆けています。
そのステイゴールドの子供が世界に挑戦している、しかも一番人気。
それを知り胸が熱くなりました。
サイレンススズカは子供を残すことはできなかったけど、同じ父、同じ時、同じターフを駆けたステイゴールドの子供が世界で戦っているのです。
競馬はロマンです。
脈々と受け継がれる血のロマン。
久しぶりに緑のターフをサラブレッドが駆ける姿を見たくなりました。