<中学生の頃>


最大の楽しみと言っても過言ではなかった修学旅行。


中学の友達もみんなハイテンションだった。


行きのバスではカラオケが付いており、オラついた男の子が涙のキッスを熱唱するというしんどいスケジュールもなんとか乗り越えて宿に向かう。


3日間お世話になる宿に到着し、荷解きをした後は農業体験だ。


私はキャベツ農家さんに農業を学ばせてもらった。


女の子達はキャベツに芋虫が付いていたりで大騒ぎ。


女の子「虫とか付いてるけど、これ食べても平気なんですか?」


普通に失礼だなと思った。


農家さん「虫も食べたいくらい美味しいって事さ。」


優しさに感動した。


農家さん「本当に食ったらいけないものは人間の本能で分かったりするもんさ。」


なるほど、農家さんの雰囲気からか説得力があった。


農業体験が無事終わり、宿に戻って夕食となる。


夕食はすき焼きだった。


友達は大はしゃぎ。


卵を割って絡ませながら食べる。


美味い。


夕飯を食べた後は風呂に入る。


さっぱりした後、部屋でだらけていた時だった。


友達「✖️組の〇〇君が部屋で吐いたらしいぞ!」


何故か興奮した様子で部屋のみんなに伝えてきた。


部屋のみんなも興奮してそいつを冷やかしに見に行くらしい。


眠気が強かった私は布団を早めに敷いて、部屋で少し眠ってしまっていた。


2〜3時間くらい寝ていたようだ。


しかし、誰も部屋に帰ってきていない…


気になった私は廊下に出る。


するとそこは地獄みたいな光景だった。


廊下には体育座りをしながらエチケット袋を抱え込んだ生徒だらけ。


先生達は廊下で気分の悪くなった人を順番に宿の玄関に集めていた。


玄関を覗いてみると、救急隊員が生徒から症状等を聞きながら色のついたリストバンドを付けていた。


緊急性の高い生徒は救急車で搬送されるらしい。


寝て起きたらゾンビ映画に入り込んでしまったかのようだった。


先生からは集団でノロウィルスに罹ってしまったと話があった。


すき焼きの卵が一部傷んでいたらしく、そこから空気感染したそうだ。


体調が問題なければ部屋から出ずに寝るよう言われた。


翌日になると、180人くらいいた生徒は20人くらいに減っていた。


当然、事前に組まれていたスケジュールは全て中止となり、残りの2日間は部屋で配られた弁当を1人もそもそ食べていた。


とても孤独で虚しかった。


農家さん…本能で分かるには修行が足りなかったみたいです。