<小学生の頃>
ある日、我が家にわんこがやってきた。
その頃、私は動物が怖かった。
特に子犬だと歯が痒いらしくよく噛んできた。
闘技場へと変わってしまったリビング。
ご飯の時間になると息を殺して中の様子を伺う。
わんこが他のものに夢中になっているタイミングを見計らって、高めのソファへ駆け上がる。
気づいたわんこは何とかして上がろうと必死だ。
ビクビクしながらご飯を食べ終える。
母は爆笑している。
(どうやってこの島から脱出しよう…)
未だにわんこは私に興味津々。
閃いた私は他の椅子をリビングの外に向かって並べ始める。
なんとか椅子を伝って外に出るのだ。
ゆっくりとだが、確実に外に近づいて行く。
母は爆笑している。
ドアノブに手が届く。
…あれ、これ詰んでる。
開いた瞬間にわんこより早く外に出れる気がしない。
というかわんこを挟んでしまいそうで怖い。
母を見る。
母「最近はもう噛まないから大丈夫よ。」
意を決して椅子から降りた。
噛まれる私。
母は爆笑している。
その日の風呂はよく沁みた。