数か月が過ぎてもマイクは戻ってこなかった。
ビリーは喜んだ。競争相手がいなくなったからだ。ビリーは
水の代金を独り占めしてほくほく顔だった。
マイクにはバケツを二つ買ってビリーと競うつもりはなかった。
その代わりにビジネスプランを立て、会社を興した。そして、
四人の投資家を見つけ、実際に現場で仕事をする社長を雇い、
六ヶ月後、建築作業員を引き連れて村に戻ってきた。一年後、
マイクの会社は村と湖を結ぶステンレスのパイプラインを
完成させた。
パイプラインの開通を祝う式典の席上で、マイクは自分のところ
の水はビリーが運ぶ水よりもきれいだとみんなに告げた。ビリーの
水に土がまじっていると文句を言う村人たちがいることをマイクは
知っていたのだ。マイクはまた、自分の会社は一週間に七日、二十四
時間休みなく水を供給できると告げた。ビリーは週末は働かなかった
ので、水が運ばれてくるのは月曜から金曜までだった。そのあと、
マイクは、より高品質で信頼性のあるこの水の供給サービスに対する
料金をビリーの料金の四分の一にすると発表した。村人は大喜びで
マイクが作ったパイプラインの蛇口に飛びついた。
マイクとの競争に勝つためにビリーはすぐに水の料金を四分の一に
下げ、新たに二つバケツを買った。そして、四つのバケツすべてにふたを
つけて水を運び始めた。また、サービスの質を高めるために、二人の
息子を雇い、交代で夜や週末も水を運ぶことにした。息子たちが大学に
進むために村を出るとき、ビリーは息子たちにこう言った。
「はやく帰ってくるんだ。このビジネスをいつかおまえたちのものに
なるんだから。」
でも、大学を終えた二人の息子たちはどういうわけか村には戻って
こなかった・・・。
(続く)