躾と芸を勘違いしている飼主が多い。「お手、お代わり、ちんちん」…これは芸である。

 芸を教えることには一生懸命になるのに、躾は全くしていない…。

 「座れ(sit)、伏せ(down)、止まれ(stop)、待て(wait)来い(come)」…こちらが躾である。

 飼主が犬をコントロールするためのものが躾である。

動物が嫌いな人、苦手な人に不快感を与えたり迷惑をかけたりしないために、どうしても必要だ。完全に室内飼いで、外には出さない、というのであれば躾は必要ないだろうが、それでも敷地の庭に出て外に向かって吠えっ放し、だけで近所迷惑である。来客に対しても「自分の縄張りに侵入した」と噛みつく犬もとても多い。無駄吠え、噛みつきを止めさせるのも躾である。

 散歩に出す。引っ張って、あるいは怯えてちゃんと歩かない。よその人や犬に対して吠える、威嚇する、仲良く遊べない…では困る。

 どうやら犬が飼主に対して「この人がワタシのボス」と認識していないようだ。

 なぜこういうことが起こるのだろう。

 日常の暮らしの中、犬と飼主のかかわりから躾のポイントを見る…。


 一番のポイント、餌をやる時。


 餌をくれる人が、最高の「ボス」だ。ここで「スワレ」「マテ」「ヨシ」が訓練できる。

食器を犬の目より高い位置に。犬が立ち止まって上を見る。最初はこれで誉めて餌をやる。

次はこの状態ができたら、食器を犬のほうへ近づける。犬は座るはず。後足立ちしたら食器は上へ。届かない高さへ上げる。

 犬とアイコンタクトを。これも大切なポイント。目を合わせながら。

 誉め方が意外に難しい。高い声で、笑顔で、オーバーに「あなたが言うとおりにしてくれて私はこんなに嬉しい!!」犬に分かるように。撫でてやる。外国人はこれが上手い。

 「よし」でも「よーし」「GOOD!!」「NICE!!」でもいい。

これで彼(彼女)は俄然やる気になる。

 静止できたら誉めて餌をやる。次の段階は静止したら「マテ」と言いながら(小さな声でいい)食器をゆっくり犬の目の高さから降ろしていく。犬が動いたら元へ戻す…これを繰り返す。

 できたら「ヨシ」と言いながら餌を床におき、誉めながら食べさせる。食べている時に、食器に手を入れたり、身体を触ったりする。唸り声を上げたら首根っこを掴み犬の動きを止め「ノウ!」叱る時は低い声で強く。餌を取り上げてやり直す。「この人に逆らったらゴハンもらえない」ことを分からせる。

 これは餌の時間以外でも、フード一粒でもできる。


 二番目のポイント、散歩で。


 散歩は躾のチャンス。ただの「運動のための散歩」で終わらないように。リードで犬をコントロールする方法を身につける。

 初めてリードを付けると嫌がって引っ張る犬も多い。リードだけを付けて室内や庭に放し、リードに慣らす。

 慣れたらリードを持って歩く。犬が行きたい方向へ引っ張ったら(位置関係では犬が前、飼主が後になったら)飼主はすかさず反対方向へ身体を向ける。これで飼主が「前」になる。犬はリードで引っ張られる上に、飼主の後ろを歩いている状態になる。これを繰り返す。「この人の後ろを歩く」ことを分からせる。

 飼主から常に犬の目が見える位置に、自分の足元を見たときに犬の顔が見える位置で犬を歩かせる。リードは弛んだ状態で歩けるようにする。

 引っ張らずに歩くようになったら「トマレ」の訓練を。

一緒に歩いて、飼主が止まる。この時リードを張って犬の動きを止める。

止まって静止したら誉める。 

 これができると、散歩中の「拾い食い」を防ぐことができる。最近は危険なものが落ちているから、これは重要。

 三番目のポイント、遊びながら。

 遊んでいる時も躾はできる。身体を撫でながら犬を寝かせる。お腹を触る。撫でる。犬が仰向けになりお腹を出すのは「服従」のポーズ。みぞおちの辺りを掻いてやる。足をヒクヒクさせながら「そこそこ、気持ちいい」ができればOK.

 犬は集団生活をする動物である。その意味で社会性を持っている。集団にはボスがいて、それに従う。この習性を利用する。


 

  してはいけないこと。

急に動いたり、犬の視線より上に手を出したり…

 自分に危害を加えられると思う。臆病な犬ほど反撃の時ブレーキがかからない。

「うちの子は小さいから人には危害を与えないわよ」…小型犬でも歯は鋭く、顎の力は強い。自分に危険が及べば「牙を向く」のだ。

 犬が混乱するような「変更」をしない。これはダメ、と決めたらずっとダメを通す。

例えば「畳の部屋には入らない」「おもちゃを犬に預けっ放しにしない。遊んだら飼主に返す」…など一度決めたルールは変えない。