第五章市ヶ谷（４）

【法廷】④

トビリシのアパートにて

テレビに映ったパル判事

京都にパル判事の顕彰碑が建立された際、インド大統領が送ったとされるメッセージがあります。

「博士の有名な反対判決は、勝者側の偏狭なナショナリズムと政治的復讐とを退け、それよりも平和そして国家間の和解と親善のために努力すべきことを説いた、感銘深い呼びかけでありました。」

（水間政憲「ひと目でわかる『アジア解放』時代の日本精神」PHP研究所、2013年、33頁）

というものでした。これが一番適切な評価ではないかと僕は思います。

またもうひとつ、パル判事を称賛する際にいつも引用される、パル判決書の最後の一文、

「時が熱狂と偏見をやわらげた暁にはまた理性が虚偽からその假面をはぎとった暁にはその時こそ正義の女神はその秤を平衡に保ちながら過去の賞罰の多くにそのところを変えることを要求するであろう」

は、前掲書「東京裁判を正しく読む」の著者・牛村圭氏によると、ジェファソン・デービス（南北戦争当時の南軍の大統領）の最晩年の論考からの引用だそうで、実際は南北戦争の研究書からの孫引きだろうとしています。（103頁）

彼が考えだした言葉ではないんですね。

次世代への伝言 ＃１３５ 第五章 市ヶ谷（４） 法廷④

次世代への伝言　＃１３５　第五章市ヶ谷（４）法廷④