そしてもう一つ、「発音」と楽器の関係が大きく影響してくる。

音楽の原点である歌(声楽)や、空気を楽器中に送り込みながら発音する管楽器、そして自分で音程やピッチを作り出さなければいけない楽器の場合、第一発音とツボに入る第二発音のポイントがあり、さらに音波の増減の感覚が自然に生まれる。


ピアニストの大きな欠点をあげるとすれば、この感覚が欠如しているという事だろう。
何故なら音程がはっきり決められてしまっていてドならドのキーを下げればきっちり440ヘルツの音がどんなに速いパッセージであろうとも即座にポーンと鳴ってくれるからだ。
そこには発音のタイミングに存在する時間の幅や揺らぎは皆無になり、ソルフェージュのみの世界だけが羅列されていく。


僕が生徒さんたちに、イタリアオペラやドイツリート、ナポリカンツォーネを毎日のように聴いて声楽的感覚をDNA化するようにしつこくお願いしている真意はここにある。