札幌コンセルヴァトワール院長である宮澤功行先生は、僕が桐朋学園大学附属の桐朋女子高等学校音楽科(共学)に入学し東京に出てきた頃まで7年もの間教えて下さった恩師です。
当時まだ20台だった宮澤先生のレッスンはいつも情熱的で厳しく、どんなに幼い年令の生徒に対しても厳しく、妥協を許さない素晴らしいものでした。
ピアノの技術のみならず、音楽の素晴らしさ、尊さ豊かさを、そして哲学を僕は宮澤先生から教えて頂きました。
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宮澤先生と中学生の僕
先生若い(笑)!

2006年から、僕は自分の故郷でもあるこの札幌コンセルヴァトワールの客員教授として年に数回、特別レッスンをさせて頂くようになりました。
客員教授は、尊敬する宮澤先生に認めて頂き、信頼して頂いているからこそのポジションですので、とても有難く嬉しい事で、いつもとても楽しみに特別レッスンに伺っているのです。
生徒さん達のレヴェルは非常に高く、その演奏能力と音楽性の豊かさは目を見張るものがあります。
モスクワ音楽院も注目し始め、今ではロシア政府からの派遣という形で現役の教授達が毎年札幌コンセルヴァトワールを訪れ、スカウトに躍起になっているほどなのです。
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宮澤先生が創られた情熱の日・コンクールシューレの審査でご一緒したモスクワ音楽院教授オフチニコフ先生と


その宮澤先生の音楽活動が40周年になり、又今の素晴らしい校舎が建設されてから25年になるという年を祝うガラ・コンサートが、昨年12月5日に札幌のサンプラザホールで開催されました。
音楽院の優秀な生徒さん達はもちろんのこと、東京音楽大学教授の弘中孝先生や宮澤先生のお嬢様で音楽院教授の宮澤むじか先生など、素晴らしい演奏家が集い演奏を繰り広げる豪華な演奏会になりました。

僕は宮澤先生の指揮のもとで、オーケストラHARUKAさんとベートーヴェンの皇帝を共演させて頂きました。
恩師の指揮で大好きで大切なレパートリーを演奏出来るなんて、このお話を頂いた時は本当に嬉しく光栄に思いました。

昨日アップしたように、11/26日はトッパンホールでの連続リサイタル。
翌日に札幌へ飛び皇帝のリハーサルと非常にタイトなスケジュールでしたが、宮澤先生との初共演ですから弱音なんか吐いてられません。
疲労も感じないままオーケストラHARUKAさんと初顔合わせに突入!
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宮澤先生とオーケストラの音楽と自分のそれとの共通する想いと情熱を確認、早くも演奏会の成功を予感させてくれる、実りあるリハーサルとなりました。

一度東京に戻り、数日間で大学でのレッスンを詰め込み仕切り直ししてから再び札幌へ。
順調にゲネプロを終えさあ、いよいよ記念演奏会開演です。

生徒さん達や先生方の熱のこもった演奏が続きます。
弘中孝先生とむじか先生の素晴らしいラフマニノフの二台ピアノの演奏を楽屋で聴きながら本番の衣装替え。
段々と程良い緊張が襲ってきます。
コンコンと楽屋のドアをノックする音とともに「そろそろステージ裏へお願いします。」の声が。
ステージ袖には既に宮澤先生が静かに立っていらっしゃいました。
「僕の事、ちゃんと見てね!」「リハーサルの時だってちゃんと見ていたじゃないですか!」「ハハハ!そうだね!」そんなやり取りをした後、いよいよステージへ出ていきます。

会場は、宮澤先生のお祝いの会に駆けつけたお客様で一杯でした。
この客席を見た時、宮澤先生の40年間の音楽活動、教育活動の重みと尊さを身に染みて感じた気持ちがしました。

宮澤先生の渾身の一振りにより皇帝の演奏が始まりました。
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演奏中、幼い自分に汗を飛び散らしながらレッスンして下さった宮澤先生が、今隣りでオーケストラを指揮して姿を見て、感無量。胸が一杯になりました。
最終楽章では歓喜のワルツで宮澤先生が笑顔で語り掛けて下さって、まさに音楽上での会話を存分に楽しむ事が出来ました。
僕にとって忘れられない、特別なステージになりました。

宮澤先生、本当に嬉しかったです。
素晴らしい音楽での会話をどうもありがとうございました!
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