「なんだ、そのぶかっこうなコートは」わたしの見慣れぬ衣服を見るなり言った。「どこで拾ってきた。そんな物いくらでもあげたのに」
目をすがめ、あごに手を当ててニヤニヤしながら、一斉がなにごともなかったかのように、陽気に品定めした。
「俺のは、お前には少し小さいか。ならよし、こんど修道所の有り余るお供え服をもらいに行こうではないか」
ズボンが驢馬革でコートが馬革だと言おうかと、言って笑い合おうかとしたが、喉がぶーぶー言うだけで、場違いな笑顔を作ってしまい、ジョルジュは、ふふっと鼻で笑い、何をニヤニヤしている、とうわくちびるの左端を上げた。
「ついでに靴も貰うとするか。そいつは、物を割り引きで買える特待優遇者様証明書みたいなもんだからな」
ちらっと床の方に目をやり豪快に笑った。わたしも、彼の優しさとユーモアに触れて春の日差しように微笑んだ。
先端部がくるっと巻いて尖った革靴を履いていた。側面はガザガザに擦れて毛羽立ち黒光りし、爪先あたりには花が咲いていた。花の中では親指が芋虫のように動いている。わたしは、頭をかいた。
ここで、靴について考察しておく。長距離を旅して歩くわたしがどんな靴を履いていたか。底には厚手の革が何枚も重ねて貼ってあった。それでも長旅には擦れて破けてくるので、わたしは何かを付けた。それがなんだったか、いまひとつ思い出せない。木の板だったか、ゴムはまだなかったし、コルクは意外ともろかった。麻を編んだ物も雨に弱かった。木や革に鋲を打ち付けてもみた。ーー軽石。軽石を膠で接着して得意になったのを思い出した。内側には、足が痛くならないよう毛織物を敷いた。
はじめ、木靴の内側に何枚も革を巻き、肌と触れるところは柔らかな毛織物を張り付けていたのが、木靴のガワだけが残り底だけがすり減ってくるので、ある年齢から、十八位だったか革だけの靴の底に木の板を張るのに変化した。その底板が減るのを遅らせるために軽石を貼り付けたのだった。
※ ズボンが驢馬革でコートが馬革 日本で言えば、馬革と鹿革の組み合わせをしているといったところか。驢馬と馬を掛け合わせたのが最高のバカと見なされることがあった
