「おおかた」立ち上がりながら親方は言った。「頸(くび)の骨でも折ったんだろう。体が利かなくなっちまっても死ぬに死に切れず、あぶく銭を湯水のように使う夢でも見て、生き長らえていたのにちげえねえ」

その臆測には、どういうわけだか、いつになく断定的な強さがこもっていた。目の前でカゲグチを叩かれたようになった、〝生き長らえた死体〟にどんな言い分があったのか、無反応な彼をして、これもまた臆測するしかなかった。

それにしてもここで息絶えた人たちは、まさか自分がこんな目に遭うと予見していたのだろうか。たいしてよいこともなかった卑屈でねたみに満ちた人生の果てが希望のまったく閉ざされた、陰湿な意図に満ちた、死に場所に最もふささしくない場所になるなんて。

そんなことが朧げに浮かんでくる自分に焦点が合った。

「もどるぞ」

「でも・・・」まだ生きている者を見捨てて行くわけにはいかないと思った。

「どうしようもできん」

 

どうして親方は、下に落ちた者に慈悲をかけなかったのか? 地上に生還できるよう、もっと簡単な仕掛けにしておかなかったのか? なぜ、この屋敷の主の片棒をかつぐようなことをしたのかーー 後ろ髪を引かれるような思いを引きずったまま、親方のあとについて階段を昇った。

 

「あいつにゃあ、おめえも会ったことがあるぞ」

羊の台座から出てしばらく歩いていると、身に覚えのない、奇怪なことを言い出した。