階下は五十センチ四方の甃(いしだたみ)になっていた。そこに足をつけた瞬間、キキっという鳴き声と共に狼狽した鼠の散逸騒動が起こり、どこかに集結して息を潜めている気配が伝わってきた。すぐに息苦しさを感じた。宙空の棚によってはかなり濃厚な腐敗臭と危険な黴の臭いが漂っている。

わたしたちは天窓(落下口)の真下に横たわっている〝生きた死体〟を目指した。水が染み出ているのか、砂と混じってザラザラしている。ここで発せられる全ての音は減速し、無へと収斂した。どこか深い闇に吸い込まれていくように。おそらくは石組みの構造で消音するようになっているのだろう、宙を歩いているような感覚に囚われた。

ところどころにフェイク金貨が散らばっていて、四、五体だろうか、部屋の隅には服を纏った白骨や腐敗しかけた死体があった。彼等は最期の絶叫を、助けを求める懇願を、この部屋特有の音響効果のおかげで、情感の通りに耳にすることはできなかったにちがいない。