馬車に乗せられた。
教会からずいぶん離れたところに連れて行かれたと思う。だんだん周囲が静かになるのがきしみ音の響きの変化によってわかる。揺れを利用してわたしは痛みをごまかした。
ドウ!
という馭者の声と共に馬車は停止した。足蹴にされ、荷台から転がり落ちる。乾いた冷たい道にまるで生肉のように貼りついた。指の先がじんじんする。ちいさく馬の鳴き声がして蹄の音が遠のいて行く。激痛。
舌、喉、食道、胃。焼けただれ、焦げ、破傷。疼き。無数の針を突き刺されたような激痛が走った。
ふと、親方のことが思い浮かべられた。両手両足を開いて仰向けになる。どこもかしこも体がこわばり緊張していた。ひどく疲れている。優しかった親方。しばらく無心で満天の星を眺めていた。不思議と痛みは遠のいた。
ーー生きろ、生きるんじゃ、ジョバンニ
荷車に乗せてしょっぴかれた親方の声がする。わたしは死なない、絶対に。この痛みは、死んで終わらせるほどのものではない。そう思うと気を失った。
朝方目が覚めた。ひどく寒い。凍えそうだ。手も足もザラザラと痺れている。だがまるで他人のものだ。動かない。固い革の手袋でもはめているのか。
なにが起きて、自分がなぜここにいるのかを思い出したとき、男の声がした。
「おい、大丈夫か」
顔を向けた。馬から人の降りる音。声が近づいてくる。目やにが目蓋を粘着している。しばたきながらうっすらと目を開く。割れたガラスの破片をのぞいたように風景がにじんでいた。痛みが戻ってくる。誰かがすぐ脇にひざまづき、揺する。
「生きてるか」
声からしてジョルジュ。
わたしは笑顔を見せた。
ほっとするジョルジュ。大急ぎでかかえおこし後ろに乗せた。
「いま、医者に行くからな、しっかりつかまってろよ」
ハイ、ヤー!
