奥にひかえていた別の男が姿を見せた。頭巾の奥にちらりと見えたのは、細い目と大きなあごだった。ここでやっと火搔き棒。

「天にましますわれらが神よ!」

言いながら、打擲。唇が切れ、血が口にしみた。「あとにつけろ」「天にもましますわれらが神よ」

「かってに、言葉を変えるなと言っただろ!」

言って、殴る。殴る、殴る。

殴られながら笑った。まるで陽気に。男が苦々しい顔をして唇をゆがませた。おおきく息をしながら、わたしは大きなあごの男を睨みつけた。神と人間の分離。いくら方便で罪を認めても、これを認めるわけにはいかない。神はわたしの内にある。外に、どこか遠くにあると思い込ませる。それこそが、第一の誤りなのだ。内にあるからこそ、外にもみえるのだ。人間とは隔絶した全知全能の神を信じるわけにはいかない。それだけは命にかえてもーー。

「お前たちの信奉するイエスは、そんなことは言っていない、彼はーー」

「ケッ。イエスなどという男は反逆者にすぎぬ。十字架で血祭りにあげられた男をせいぜい拝めばよい」下卑た笑いを唇に浮かべながら、最初の殴り手が言った。

大きなあごの男が火搔き棒を振りおろした。上半身が傷つき血を流した。

「こんなかんたんな文章が憶えられないのか、頭の悪いやつめ」

殴る、蹴る、殴る。蹴る蹴る、殴る。入れ替わり立ち代わり加えられる制裁。そのたびにわたしは笑う。いくつかの歯がかけた。

「か神は、いのちは、この我が内にも在る。この肉体も、いのち。なぜ、おまえたちは、自らの崇める神を殴り傷つける!」

血を吐きながらわたしは叫ぶ。それを聞いた男、

「ああ主よ、迷える子羊を救いたまえ」

唱えて殴る、殴る、蹴る。

しばらくすると、それまでいなかった男が立っていた。朦朧とする意識、腫れ上がり、切れた瞼から出た血で塞がれた視界からぼおっと見る。焦点は定まらない。男は、目だけ開いた黒い頭巾をかぶっていた。そして手には棍棒。五十センチほどの木製か。