今朝は初夢ということになっているそうですが、私はもう元日から何度も眠ったり起きたりして、いろんな夢を見たので、初夢はおしまいかと思っていたのですが、さっき起きる前におもしろい夢を見たので報告。
なんとそこで私は、夢に登場してきた男にインタビューをして答えてもらったのでした。
本を探していました。その本は数年前、まだ『嫌韓』が流行る前に出版されていた嫌韓本であったのですが、行方が分からなくなっていました。確かあそこにあったはずだが、と探して回り、どういうわけだか、知人の部屋にまで押しかけたのです。
私の家ということになっている所も見たこともない間取りと作りだったのですが、どうして他所の家にまで行こうと思い立ったのか、それも不思議であります。
知人はちょうど引っ越しかなにかで、人がたくさんいて部屋の中が雑然としていました。そいつは、高校時代のクラスメイトということになっていて実在の人物です。遠視系の眼鏡をはめ、ひよろっと青びょうたんみたいな印象がありました。どことなく丁稚みたいな雰囲気で、たいした会話も交わしたこともなく、卒業以来三十年、思い出したのは初めてかと思います。
まあ、その家に到達する前に、大きなバッグからはみ出た印鑑証明やら通帳やら、大量の重要書類の入った大袋に遭遇し、ねこばばしようかとも思ったのですが、すぐそばに門のあった農協だかなんだか、そんな書類を扱っていそうな施設があったので、女性の職員に報告するとふたりがかりであれこれ思案し始めたので、私は目的地へと急いだのでした。
知人の部屋は、まるで学生の下宿みたいで、事情を話し、本棚、押し入れ、トールボーイのチャックつき衣装ケースなど、プライバシーを侵害されてちょっと不機嫌そうな知人を尻目にあちこちあらためさせてもらいました。
最後に玄関にあった大きな下駄箱まで確かめたのですが、お目当ての本はない。諦め、さて用事が済んだので帰ることに。その際(きわ)、玄関にいた人にたずねた。
「あの人は、親のやっている宗教の分派をやっている」
と答える。あいつはそういう家庭だったのか、と思った。あの丁稚みたいな風貌からは想像もできなかったがーー。
ハッキリとは憶えていないが、臨済教の分派で黎明曲とか言うそうだ。教ではなくて曲というのか、と思いながら聞いた。
歩いていると、とんねるずの石橋に追いついた。彼も帰る途中であった。
「あそこに通ってなにか効能があったか?」と私は聞いた。
「うん」と石橋は答えた。「こうして」
彼は演技なのか試合なのかは分からないが、酔拳の技のひとつがうまく決まるようになったと言った。
「頭をポンを叩いて」
くるくるっと体を回転させながら、両の腕を上に突き出す。その技が上手にできるようになったのだそうだ。ポンと頭を叩くとき、何かが入るのらしい。
それを聞いた私はなぜだか知人の家に引き返した。
知人の家には2階があり、いつの間にか私はそこにいた。引っ越しの手伝いをしに来ていたのは信者なのだろう、5、6人いたかもしれません、なんとなく間の悪さを感じながら皆にまじって私もそこにいた。すると、ひとりの男が、何を思ったのか、襖の1枚を開けたのです。一瞬だった。他の部屋とは不釣り合いにそこだけ広く、暗く、なにやら異様な雰囲気の漂う広間で、中には、中南米にあるような奇怪な顔をした黒い小人の彫り物がずらっと並んでいるではないか。
開けた時の様子を、が、が、が・・・、っという表現をしていました。開けた男がです。A4用紙3枚、なにやらレジメの右上をホッチキスで留めた書類に、自分のしたこと、それから私の知人の行動や反応を書き残していたのです。自分が襖を開けた時の様子を『が、が、が・・・と開けた』と鉛筆で書いていました。
知人は、親から引き継いだ宗派の教師のひとりをやっていて、ここでは教祖として扱われているようだった。
あれは、なんだ? ブードゥー教を思わせるただならぬ奇妙さを醸し出していた部屋が気になった私は、近くにいた信者に問い質したい気分だった。
彼はまさに教祖然として、苦虫をかみつぶしたような、困った顔をして、「閉めておけ」と静かに言い放ち、何事もなかったかのように振る舞いまった。が、居合わせた者からは全員、してやったり、秘密を暴いてやったぞという雰囲気が伝わってくる。
察するにこういうことだ。教祖にしてみれば、そのことをまだ信者には披露しておらず、研究の段階で、こっそりやっていて人に知られたくない。だが、信者にしてみれば自分たちが第一に信頼している教師の隠し事がねたましく悲しいといった、こうした宗教にありがちな葛藤というか些細な確執があるのである。
広間には大小様々な黒い小人の像があった。それは頭でっかちの三等身、素っ裸で、腰掛けたかっこうをしていた。手足の短い乳幼児を想起させた。材質は、木? いや銅かなにかの金属かもしれない。その重々しさからしてーー。木であったとしても黒檀か、いや陶器かもしれない。いずれにせよ、黒光りさえしないほどの黒さ。つや消しのマット調。顔は目を引ん剝いて、横広く分厚い唇。濃い眉。ボサボサの短い髪の毛。怒ったような気持ちわるい表情をして、なにかよからぬ儀式でもおこないそうな人形であった。南米ボリビア、アステカ、トーテムポール、モアイ、土偶。なんだかそういう類いのものだ。無機物の人形のくせに今にも動き出しそうな精気を宿している。それがいくつもあるひな壇に腰掛けさせてあるのだ。
魂を宿す実験でもしていたのかーー。
なにやら話している教祖に耳を傾けている信者たちの脇で、私は教祖の秘密を暴いた件(くだん)の男に近づいた。男は二十代の半ばか、細身の印象である。畳の上に置いてあった彼用の3枚のレジメに気がついた私はそれを読んだのだった。男はさっきの様子をメモしている。わたし が、が、がっと開けた 教祖 重苦しい声で、閉めておけ わたし そっと閉めた、などと脚本でも書くかのように。レジメの右上には、その男の名前であろうか、ポヲンと直筆で書かれてあった。
ここからがインタビューをした場面。
「これはあなたの名前ですか?」
「そうだ。虎出しポヲンという」
虎出しが苗字でポヲンが名前なのだそうだ。どっちも聞き慣れないが、苗字が漢字仮名混じりなのが珍しい。蔵出し明太、山出し女、ベロ出しチョンマというのにゴロや響きは近いが、どうも洟垂れ小僧という言い方のようなおさまり方だ。
「虎出しポヲン?」
「そう。どのくらいの大きさか、という意味だ」
「ポヲンが?」
男は顔を縦に振りながら続ける。
「鼻3つ分ということだ」
なんでも男が話すには、自分の父親は紫色の細い鼻をしていて、その3つ分がポヲンなのだそうな。おもしろいので私はメモ帳を取り出し書き留めた。
「紫の鼻、3つ分?」
私が確認すると、男はまた顔を縦に振る。
「そうだ」
と言いながら、鼻を触り、触った手をポヲンと発しながらパッと弾けるように開く。見ると、確かに男の鼻は鬱血でもしたような紫色をしていて、ちょうど痩せこけたサツマイモのようなあんばいだ。これが3つ分なら、この男の父親の鼻はさぞかし小さかったことだったろう、と思った。
ここで目が覚める。
変わった夢だったなあ、と思いながら忘れぬうちにとメモを取った。それにしても、さすが夢である。ポヲンの意味を聞いて、その由来が父親の紫色の鼻3つ分などという答えが返ってくるなど、夢にも思わなかった。
後からあれこれ、内容が何を意味するのか、家の者と討議した。ーーそれはまあ妻であるのだが、彼女は、その黒い土偶は、生け贄というか、たとえばエビなますとか鯛の刺身のような好きな食べ物を与えれば、なんでも言うことを聞く宇宙の使者で、人の足を引っ張れと命令すれば実行し、喜ばせよと命令すれば実行する、善悪観念のない忠実なシモベではないかなどと言い出した。
虎出しポヲンについては、虎の巻がポーンと出て来るのよ、などとのんきなことを言う。
彼女の夢判断は置いておくとして、どうでもよいような本を探しに行き、そこで変な宗教に出会い、教祖と信者の間の確執の場面に遭遇し、それを暴いて見せた男の名前が虎出しポヲンとは。しかもブードゥー教かとみまごう、奇怪な人形たち。縁起が悪いったらありゃしない。
これが正規の初夢ということになってしまうのでしょうか。
