気づいてみれば、
私は『感謝』と、いちいち言わない。
なんというか、
常に感謝した状態だからだ。
ときどき感極まって、思わず手を合わせ、
ありがたい、とつぶやきはする。けれども、
『感謝が大事だ』とか
『感謝こそ至高の境地だ』などと
いちいち言わない。
そういう意識を忘れているのだ。
風呂の水があふれるように満ちてくると、自ずと
感謝の念を覚えていて、
それと同時に手を合わす。

寝る前に、今日会った人を思い出し、
手を合わせ、ありがとうと言う。
彼と彼の守護霊たちよ、
ありがとう、と。
そして、彼の会った人たち、ありがとう。
彼の会った人たちの守護霊たちよ、
ありがとう、と。
日本、世界、太陽、月、太陽系、
銀河、宇宙まで、その人々と神に
ありがとう、と思い、
眠りにつく。
残念なことに、たいていは途中で、
眠ってしまう。

なぜ、自分がこんなことをしているのか、
気恥ずかしい気もする。
日課にしているのではない。
おのずとそうしてしまうのだ。
だから、しない日もある。
私は仏教徒でもない。
スピリットを自分の本体だと認めているが、
宗教には興味が無い。
団体で信仰することの意味が解らない。
まったく宗教の目的に外れていると思う。
教義を守るとか、
ありがたいお言葉を実践するとか、
そんなことできないと思っている。

聖人君子の吐いた言葉、残した言葉を
自分でも、同じ意味で、別の言葉で吐き、
吐くまでもなく、そう生きているなら、
それこそが、聖人の高みにはあるだろうとは思う。
理性に記憶して、正しいかどうか、
言葉にたがわぬかどうか、判断しているなら、
そんなものは、実践ではない。
自分の判断、解釈の通りにやっているだけだ。
堅苦しい、不自由な、善人の罪悪感。
徒党を組んで、世界をひとつにしようとする。
同じ考えを広めて、世界を統一しようなんて、
分裂思想の成れの果てだろう。
そんな姿も行動も、ありがたくもなんともない。

自分で深く己を見つめ、
至った境地から出てくる言葉や行動が、
どの高みにあるか、それだけが問題であると思う。
同じだけど、ちがう。
ちがうけど、ひとつ。
これは、三元論だ。
一元から、多様性が生まれ、
多様でありながら、統合し調和している。
なんでも同じだ、食いさえすればいい、
どれだって、同じだろ!
というのは、差別主義の反対の平等主義だ。
差別主義と平等なあさましさにある。
多様性はあるが、すでに全ては一体であることを認めることから、
全てが始まるのだ。
一体にしようとする試みの全てが、
分裂を増長する。
分裂しているという見方が出発点になっているからだ。

ともかくも、とても今に満足しているので、
『満足するからこそ、次に進めるのだ』とさえ、
言わなくなった。
そんなことをいちいち思い出していたことすら、
忘れている。
知恵だ、工夫だ、創造だ、
そんなことさえ、言うのが億劫になっている。
もうなにもかも、当たり前のことが、
当たり前に在るので、
その中にいるので、
空気みたいに、日ごろは
いちいち意識しない。
在ることすら忘れている。
幸せと、幸せでない時を
ひっくるめて、幸せなのだ。
だから、幸せすら忘れている。

けれども、私は『愛』という言葉だけは、
いちいち口に出して言う。
これは、愛と呼んでもよいだけの高さにあるおこないだ、
ということはいくらでもあるのだろうし、
どんな残虐なことにも、そこに
愛を観ることは可能なのかもしれないが、
やはりその究極の状態には、
いつも手が届かないからかもしれない。
このコンセプトにだけは、
いつも私をおいてけぼりにしていく。

『愛』は、猛スピードで進化している。
そんな気がしてならない。
宇宙中の存在が、より高い愛を創出しあっているから、
全体での愛は、光の早さの一兆倍の一兆倍で
ぐんぐん上昇している。
そんな感じだ。
しかも私の愛など、セコいものばかりで、
もう、150億年前に誰かが、発明して
1000億の存在たちが
すでに経験し尽くしているものをやっとこさ
追いかけているような按排なので、
いちいち口に出して、
『愛』などと言わねばならないのだ。

愛といちいち言わなくとも、
愛の状態にいて、
まったく意識せずに
最高の愛を放つことができる日が
いつやってくるというのか。
ともかく私にできることは、
中庸で、統合で、一体性で、
感謝で、ほほ笑みで、
高い喜びで、・・・。
よりそんな状態になっていくことだけだろう。
人間として生きることは、
それに障害が生じてくるからこそ、
明確に、自分がどんな高さのおこないを
しているのか、分かるというものだ。

愛。

どうもこれだけは、
一生、
言い続けることになるのではないか。
人は、自分の学ばなくてはならないことを
他人に教えているものだからである。
自分に言うつもりで他人に言おう。
自分自身に言っている。
だからせめて、その心がけだけは、
怠るまい。

ふと、そう思った。